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著作権法改正による違法ダウンロードの刑事罰化

木原 右

1 はじめに

 少し前のことになるが、著作権法の改正により、いわゆる「違法ダウンロードの刑事罰化」に関する規定が盛り込まれ、昨年(2012年)10月1日より施行された。

 「YouTube」や「ニコニコ動画」のような動画閲覧サイトを利用している人は数多くいるであろうし、それ以外の動画閲覧サイトに足繁く通っている人もいるだろう。そのような人の中には、今回の著作権法の改正について、少なからず興味を持っている人もかなりいるのではないだろうか。

2 著作権法119条3項

 まず、問題の著作権法の罰則の規定を見てみる。

 「第30条第1項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」(著作権法119条3項)

 これを簡単にまとめると、

(1) 私的使用の目的で

(2) 有償著作物等の

(3) 著作権・著作者隣接権を侵害する自動公衆送信(いわゆるオンデマンド送信)を

(4) 受信して行うデジタル方式の録音又は録画を

(5) そのことを知りながら

(6) 行って著作権・著作者隣接権を侵害した者を

処罰する、ということである。

3 私的使用目的の複製の扱い

 まず、著作権法119条3項にて定められた「私的使用の目的をもって」という要件について、若干、説明したい。

 著作物の無断複製行為は、著作権侵害行為で民事的に違法であり、差止や損害賠償の対象となりうる上に(民法709条、著作権法112条など)、刑事的にも罰則が定められている(著作権法119条1項)。

 しかし、著作物の複製行為であっても私的使用を目的としている場合には、原則として適法とされ(著作権法30条1項)、罰則も科されない(著作権法119条1項)。

 この場合には、さらに例外規定があり、(1)公衆の使用に供することを目的として設置されているビデオデッキなどの自動複製機器を用いて複製する場合(著作権法30条1項1号)、(2)コピープロテクション等の技術的保護手段の回避により可能となった複製を、その事実を知りながら行う場合(同2号)、(3)違法アップロードされたコンテンツのオンデマンド送信に基づく「録音・録画」を、その事実を知りながら行う場合(同3号)、には複製は許されず民事的に違法となる。

 すなわち、私的使用目的の複製であっても、著作権法30条1項の各号に定める除外事由に該当する場合には、原則に戻って、民事的に違法となるのである。しかし、その場合でも、従来は、私的使用であれば刑事罰は科されなかった(著作権法119条1項)。

 今回の著作権法の改正は、従来、民事的には違法とされながらも刑事罰までは科されていなかった私的使用目的の除外事由に該当する複製に、一定の範囲で(主に3号関係で)刑事罰を科すこととしたものである。

4 各種行為の処罰可能性

 今回の著作権法改正により、どのような行為が処罰されることとなるのであろうか。

(1) まず、例えばプロモーションのために著作権者がアップロードした場合など、適法にアップロードされたコンテンツを視聴することは、当然、処罰されない。これは、「著作権・・・を侵害する」自動公衆送信ではないからだ。

 以下、コンテンツは違法にアップロードされたものであることを前提に話を進める。

(2) 次に、画像を自己のPCにダウンロードして保存する行為はどうであろうか。

 今回の著作権法改正で罰則が定められた行為は「録音又は録画」である。そして、「録画」とは、「影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製すること」をいうのであるから(著作権法2条1項14号)、1枚の画像を自己のPCにダウンロードして複製する行為は「録画」とはいえないであろう。

(3) では、動画を自己のPCにダウンロードして保存する行為はどうであろうか。

 これはまさに著作権法119条3項で想定されている行為であり、他の要件が充足されれば処罰され得る。

5 ストリーミング再生の問題点

 冒頭で述べたとおり、動画閲覧サイトなどを利用している人は多数いると思われるが、これらのサイトにおいてストリーミング再生で動画を視聴する場合はどうであろうか。「YouTube」や「ニコニコ動画」、その他の動画閲覧サイトで動画を見る場合、このようなストリーミング再生で視聴する場合がほとんどであろう。

 ストリーミング再生の場合には、一時的にハードディスク内にキャッシュデータが保存される。このようなキャッシュデータの保存は、あくまで一時的になされるだけであり自動的に順次消去されていくのであるからそもそも「複製」にあたらないとする見解もある一方で、一時的にとはいえハードディスク内に保存される以上「複製」にあたる(従って、動画のキャッシュデータの場合には「録音又は録画」にあたる)とする見解もあり、いろいろと見解が分かれているようである。

6 著作権法47条の8

 仮にキャッシュデータの保存が「複製」にあたるとしても、実は、キャッシュデータの保存については、著作権法47条の8に規定があり、以下のように定めている。

 「電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる。」(著作権法47条の8)

 要するに、キャッシュデータの保存は適法であるという規定である。とすれば、ストリーミング再生は処罰の対象とはならないこととなる。

 しかし、「違法アップロード動画」のストリーミング再生との関連でみると、若干気になる文言も入っている。すなわち、括弧書きの「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。」という文言である。この文言については、「権利侵害となる送信の受信のために一時的蓄積が行われる場合などが想定されているものと思われる。」という見解もあり(詳解著作権法(第4版)・作花文雄著、403頁)、もし上記括弧書きの文言が上記見解の字義通りに解釈されるものであれば、違法アップロードの動画を受信することは著作権法47条の8により適法とされるものではないとされる可能性も、もしかしたらあるかもしれない。

7 結論

 ただ、ストリーミング再生までも処罰するのであれば、罪刑法的主義の観点からも、もっと明確に規定すべきであり、結論的には、ストリーミング再生についてキャッシュデータの保存を理由としての処罰はかなり難しいのではないだろうか。

 ちなみに、著作権法119条の罪は、親告罪とされている(著作権法123条)。

 なお、文化庁の公式見解も、「YouTube」などの動画投稿サイトの閲覧について、キャッシュが作成されても違法ではなく刑罰の対象とならない、というものであることを付言しておく。 文化庁の見解については、以下のURLで確認できる。

<参考>

著作権法(抜粋)

第30条(私的使用のための複製)

1 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

(1) 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

(2) 技術的保護手段の回避(第2条第1項第20号に規定する信号の除去若しくは改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うこと又は同号に規定する特定の変換を必要とするよう変換された著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元(著作権等を有する者の意思に基づいて行われるものを除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第120条の2第1号及び第2号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

(3) 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合 」

2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

第47条の8(電子計算機における著作物の利用に伴う複製)

電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる。

第119条

1 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第30条第1項(第102条第1項において準用する場合を含む。第3項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第113条第3項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第4項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第120条の2第3号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第113条第5項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第3号若しくは第4号に掲げる者を除く。)は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

(1) 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第113条第3項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)

(2) 営利を目的として、第30条第1項第1号に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者

(3) 第113条第1項の規定により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

(4) 第113条第2項の規定により著作権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

3 第30条第1項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

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