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災害時の紛争解決-災害ADRのすすめ

九石 拓也

 昨年(2019年)は,9月に台風15号による千葉県を中心とした大規模停電や家屋損壊,10月に台風19号による主に東日本各地での河川氾濫による浸水被害や土砂災害と,台風による大規模な災害が相つぎました。また,台風以外にも,大地震や集中豪雨など,毎年のように各地で大規模な自然災害に見舞われています。

 災害の際,それに起因した紛争,トラブルが発生することも少なくありません。

 例えば,地震でブロック塀が倒れて隣の家の自動車を壊してしまった,台風でアパートの屋根が壊れ雨漏りをしているが大家さんが直してくれない,といったものです。

 災害時にはこのように隣近所同士や大家と入居者など,継続的な付き合い,人間関係のある相手との間で,思いがけずトラブルになってしまうことがあります。また,当事者の双方が被災者であることが多いのも特徴といえます。被災した上,ときには避難生活を余儀なくされた状態で紛争をかかえる負担は大きく,平時以上にすみやかな解決が望まれます。

 こういった災害時の紛争解決の選択肢となるのが,災害ADR(災害時ADR)です。

 ADRとは裁判によらない紛争解決の手続で,弁護士会の仲裁センターでは,経験豊富な弁護士が中立な立場で間に入って話し合いを行い,解決方法を提案するなどして,早期の解決を目指します。

 さらに災害時のトラブルについては,利用の際の手数料を大幅に減額し,申立ての手続も簡略化しています。当事者の連絡先など最小限の情報で受け付け,紛争の内容や希望する解決を弁護士が聞き取って整理する仕組みも用意していますので,利用したいけれど,どうやって申し立てたらよいかわからないという場合でも大丈夫です。

 災害ADRについて,詳しくは各弁護士会にお問い合わせください。

  ※私の所属する第二東京弁護士会の仲裁センターはこちら

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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