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ボート

山田 康成

 私は、大学時代にボート部(競艇のボートではありません。競技ボートです。)に入って4年間を過ごしました。私が所属していた一橋大学ボート部を含む東京近辺の大学は、埼玉県の戸田市にあるボートコースの周りに合宿所を構え、1年中、そこで合宿生活を送りながら学生生活を送ります。

 一橋大学のボート部は今年で創部130年目を迎える歴史のある部で、過去全日本選手権で9回優勝したことがあります。ただ、昭和の終わりころから、私立大学のボート部が高校のボート部から有望な選手をリクルートするようになり、私大勢が圧倒するようになっていました(私が4年生のときは、その当時の10年ぶりにエイトでインカレ(全日本大学選手権)の決勝に行くのが精いっぱいでした。)が、ここ数年は、なかなか強く、特に昨年は、全日本大学選手権でエイトは2年連続の2位。社会人の強豪チームとも戦う全日本選手権でもエイトで3位という好成績を収め、イギリスの由緒あるボートレースであるヘンリーロイヤルレガッタにも参戦し、1回戦でコーネル大学(アメリカの軽量級チャンピオン)に勝つなどの成果を出しています。最近の卒業生には来年のリオデジャネイロのオリンピックの日本代表候補になっている選手もいます。

 最近、好成績をあげることができるようになったのは色々な要因がありますが、一つは優れたコーチを招聘したことがあると思います。このコーチは、とても経験が豊富で、選手の力を引き出すのが上手く、選手もその指導に良くこたえ頑張っています。

 二つめは、できるだけ選手を沢山集めることです。国立大学の場合、スポーツ推薦で選手を集めることができませんから、優秀な選手を一本釣りで集めることができません。そのため、とにかく沢山選手を集め、その中から切磋琢磨して成長していくしかありません。また、沢山の色々な選手を集めると、それだけ色々な個性の学生が集まって、それぞれの個性を生かして活動すると、良い効果が出ていると思います。

 三つめは、強化に必要なお金を集める仕組みができてきたことです。学生とOBが一体となって、できるだけたくさんのOB会費を集める体制が整ってきました。ボートは艇の価格も高く、また、それ以外にも強化するための指導体制を充実したり、トレーニング施設を充実させたり、年によっては外国に遠征したりと、強くなるためにはとてもお金がかかるのです。

 一番目に挙げた要因の優れたコーチの招聘は、私の学生時代に、はじめて導入しました。先に述べたようにインカレで10年ぶりの決勝進出という結果をあげることができたのは、その点がとても大きな要因だと思っています。それまでは、OBの有志が仕事の傍ら週末だけコーチに来るという形だけでしたが、私の学生時代には、過去にも世界大会に選手を輩出した指導歴30年以上のベテランの指導者から指導を受けるようになりました。長年毎日、現場で、どうしたら選手の力を引き出すことができるか、どうしたら強く選手を育てることができるか常に考えている方の指導は、とても説得力があり、指導に納得した選手は、自らの力を進んで最大限発揮するという好循環が生まれていました。このとき、私は専門家の凄さというものを感じたように思います。外部のコーチを招聘する流れは私たち頃の数年だけでいったん立ち消えになったのですが、最近、その取り組みが復活し成果が出てきたことはとてもうれしく思っています。

 学生時代の戸田の合宿生活で、日々、どうやったら強くなれるかを考えて過ごした4年間は、私の人生の大きな転機になったことは間違いありません。ボート部時代に専門家の凄さを感じたことが、後に会社員から弁護士に転身することを決めたことにも少なからず影響を与えているようにも思います。

 春になり入学シーズンが近づいてきました。私は、この時期になるといつも多くの学生がボート部に入ってもらいたいと思っています。私自身も、当時の気持ちを思い出し、弁護士という専門家として、初心に帰って日々研鑽を積んでいくよう心がけていきたいと思います。

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