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身体障害者補助犬の受入(身体障害者補助犬法について)

清水 敏

1 はじめに

 冒頭から私事で恐縮ですが、このコラムを書いている前月に、自宅近くにある大学付属病院にて、人生で初めての入院・手術を経験しました。

 これまで病院にもあまり行くことが無く、病気や怪我を意識することも少なかったのですが、隣のベッドにいる他の患者が身体の痛みに耐えて病気と闘っているのを目の当たりにしました。

 弁護士の業務では、身体の痛みや心の苦しさを慰謝料に算定する作業もありますが、痛みを金銭で評価することの難しさも改めて感じた次第です。

 ところで、入院中に、私が多少の驚きを抱いたのは、病院の待合室で盲導犬を連れている患者を見たことです。病院のスタッフの方に聞くと、身体障害者補助犬法が施行され、盲導犬を含む「補助犬」(後述の3項参照)の受け入れ態勢を整えているということでした。

 ハーネスをつけている盲導犬を、バスやスーパーなどの公共の場でも見かけますが、盲導犬の頭数も厚生労働省の統計によると1000頭ほどに増加しており、今後ますます社会の中で利用され、今では、高い衛生環境が求められる病院施設でも盲導犬が受け入れられるようになっているようです。

 医院を経営しているクライアントの皆様においても、今後、外来受診、入院患者さんのお見舞い等で盲導犬などを連れてきた場合には、身体障害者補助犬法以下「補助犬法」といいます)により対応が求められることになります。

2 身体障害者補助犬法の概要

 平成14年に施行された補助犬法は、補助犬を使用している身体障害者(以下「補助犬ユーザー」ということがあります)が、施設通機関等を利用する場合において補助犬を同伴することができるようにするための措置を講じ、身体障害者の施設等の利用の円滑化を図り、もって身体障害者の自立及び社会参加の促進に寄与することを目的とした法律です。

 補助犬法は、病院施設に対しても、やむを得ない場合を除いて、患者が補助犬を同伴した場合、これを拒めないものと定めています。

 厚生労働省は、冊子「身体障害者補助犬ユーザーの受け入れを円滑にするために〜医療機関に考慮していただきたいこと〜」を作成し、各医院施設の実情に応じて補助犬の受入を進めています。

3 補助犬とは

⑴ 補助犬とは、補助犬法によって認定された盲導犬、介助犬及び聴導犬です。

<補助犬の種類>

盲導犬 視力の低下した者が道路などを安全に歩けるように補助する犬。
介助犬 手や足に障害のある者のために、物の拾い上げ及び運搬、着脱衣の補助、体位の変更、起立及び歩行の際の支持、扉の開閉、スイッチの操作、緊急の場合における救助の要請の介助を行う犬。
聴導犬 聴覚の低下した者のために、ブザー音、電話の呼出音、その者を呼ぶ声、危険を意味する音等を聞き分け、その者に必要な情報を伝え、及び必要に応じ音源への誘導を行う犬。

⑵ 補助犬の管理など

補助犬は身体障害者の自律的な社会参加のための不可欠な存在であり、単なるペットとは区別をされています。

補助犬を扱う際には補助犬法上、以下のような特別な管理が求められています。

・補助犬に、訓練された補助犬である旨を明らかにするための表示、あるいは補助犬であることを証明する書類を所持して、関係者の請求があるときはこれを提示しなければならないこと。

・補助犬が他人に迷惑を及ぼすことがないようその行動を十分管理をすること。

・犬の保健衛生に関し獣医師の行う指導を受けること。

・補助犬について、体を清潔に保つとともに、予防接種及び検診を受けさせることにより、公衆衛生上の危害を生じさせないよう努めること。

このため、補助犬であることは表示や書類により確認ができます。

衛生管理面では、補助犬は、補助犬ユーザーが指示した時、場所でしか排泄をせず、補助犬ユーザーの管理のもとで待機をすることができ、また、定期的なシャンプー、ブラッシングなどが義務づけられており補助犬は清潔に保たれていることになります。

4 医院施設で求められる対応

⑴ 補助犬法上、医院施設も補助犬の受入を求められています

 補助犬法上、医院施設は、やむを得ない理由がある場合を除いて、身体障害者が患者として来院した際、補助犬を同伴することを拒んではならないとされており、補助犬法は、医院施設に対しても、補助犬の受入を求めています。

⑵ 医院施設での具体的な対応の内容

 厚生労働省は、医療機関に対して、補助犬を受け入れるための具体的な対応を前述の冊子で紹介をしていますが、その主なものを述べます。

ア 受け入れ方針に係る職員間の意思統一

・補助犬ユーザーである患者を受け入れるとする姿勢を明確にすること

・職員に対し正しい補助犬の知識(表示、役割、衛生面など)接し方(待機場所への誘導の方法など)の理解検討をすすめる。

イ 受入の範囲や方法

・補助犬ユーザーに対する病院施設利用方法の公示。

・補助犬の同伴可能範囲、待機場所、排泄場所の設定、他の患者との接触のないようなルールの設定。

ウ 他の患者への情報提供

・他の患者へ、補助犬の受け入れ方針と補助犬に関する知識(補助犬はペットとは異なること、衛生面での管理がされていることなど。)、犬アレルギーを持つ他の患者への対応など。)の伝達。

5 おわりに

 医院施設にも、各医院の実情に応じて、上記のような対応を求められています。医院施設を経営されている方でまだ補助犬ユーザーの受入についてご検討をされていない場合には、今年から対応について検討を進めてみてはいがかでしょうか。

 また、私自身も含めた補助犬ユーザーではない病院施設を利用する側(患者など)においても、補助犬ユーザーの社会参加を進めることが時代の要請になっていることに意識を高めなければならないと感じます。

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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