自転車の通行路
1 自転車に関する道路交通法上の規定
まず、自転車の通行路に関する道路交通法(以下「道交法」という。)の規定を俯瞰してみる。
(1) 道交法2条1項8号・11号
自転車は、車両(軽車両)に該当する。
(2) 道交法17条1項
車両は・・・車道を通行しなければならない。
(3) 道交法63条の3
普通自転車・・・は、自転車道が設けられている道路においては、・・・自転車道を通行しなければならない。
(4) 道交法2条1項3号の3
自転車道とは、自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によって区画された車道の部分をいう。
(5) 道交法63条の4第1項、道交法施行令26条、道交法施行規則9条の2の2
普通自転車は、次に掲げるときは、・・・歩道を通行することができる。
[1]道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができるとされているとき。
[2]当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められる者として政令で定める者(70歳以上の者、身体障害者)であるとき。
[3]前2号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
(6) 道交法63条の4第2項
前項の場合(歩道を通行する場合)において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(自転車が通行すべき部分として指定された部分(「普通自転車通行指定部分」)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止をしなければならない。
なお、歩行者にも、普通自転車通行指定部分をできるだけ避けて通行するよう努める義務がある(道交法10条3項)。
以上の条文を、誤解を恐れずに簡単にまとめると、以下のとおりとなる。
[1]自転車は原則として車道を通行しなければならない。
[2]自転車道があるときは自転車道を通行しなければならない。
[3]運転者が児童、高齢者である場合、安全確保のためにやむを得ない場合などには、例外的に歩道を通行できる。
[4]歩道を通行する場合でも、中央から車道寄りの部分(普通自転車通行指定部分があるときはその部分)を通行しなければならないし、歩行者の邪魔をしてはならない。
2 「自転車道」と「普通自転車通行指定部分」
私が自転車でよく通る道筋では、道路とは別に歩道があり、さらにその歩道の中央に線引きをして自転車通行部分と歩行者通行部分とを区別している箇所がよく見かけられる。
しかし、前述のとおり「自転車道」とは車道上に設けられた専用部分であり、上記の歩道上に設けられた自転車通行部分は、「自転車道」ではない。上記の歩道上に設けられた自転車通行部分は、「普通自転車通行指定部分」ということになり、例外的に自転車が歩道を通行できる場合に通行すべき部分となるのだろう。
従って、そのような場所でも、自転車は原則として車道を通行しなければならない。
現実問題としても、歩道上を単に線で区切っているだけなので、歩行者はその線引きを意識することなく歩いており、上記の自転車通行部分を自転車「専用」部分とするにはかなり無理がある。
3 車道通行の原則と危険な箇所
従って、私がよく通る道筋のほとんどでは車道通行が原則なわけだが、中にはトラックなどがスピードを出して走り抜けていく箇所や路上駐車が多くて頻繁に車道の内側の方に入り込まなければ通行できない箇所など、車道を通行することに危険を感じる箇所があることもまた事実である。もちろん、そのような場所でも道交法上の原則に従って自転車で車道を通行していく猛者たちもいるが、私はとてもそのような勇気が持てないことも多い。そのようなときには、「安全確保のためにやむを得ない場合」に該当するのだと自分に言い聞かせて、歩道をひっそりと通行している。
4 歩道通行の際のストレス
しかし一方では、歩道を通行しているときにはまた別のストレスを感じるのである。当然のことではあるが、歩行者は自転車が歩道を走ってくる可能性があることに常に注意しているわけではないため、近づく自転車に気付くことなく、突然立ち止まったり、急に向きを変えたりする。そのため、自転車側からすれば歩行者の行動を適格に予測することができず、どのように進むべきか迷うのである。とくに最近は、スマートフォンを見ながら歩いている歩行者も多く、その行動の予測不可能性が高くなってきていると感じる。
自転車は、自動車とも、そして歩行者とも、異質な存在であることを認識せざるを得ない。
5 もっと多くの「自転車道」の設置を
私が自転車でよく通る道筋で、短い距離ではあるが、車道上に「自転車道」が設けられている箇所がある。その「自転車道」を通行するときは、思わずほっと安心してしまう。
自転車による事故を減らすためにも、もっと多くの「自転車道」が設けられてもいいと思うのだが。