弁護士コラムバックナンバー
2022年05月

2022年改正電気通信事業法案における外部送信規律(いわゆるcookie規制)(速報版)

板倉 陽一郎

1 2022年改正電気通信事業法案

 2022年3月4日,「電気通信事業法の一部を改正する法律案」が閣議決定され,国会に提出された(第208回国会(常会)閣法48号,以下,「2022年改正電気通信事業法案」という。)。

 本法案の提出に至る議論は,総務省の二つの検討会,「プラットフォームサービスに関する研究会」*1と「電気通信事業ガバナンス検討会」*2が交錯し,2021年末には事業者団体から強い反発が表明されるなど,一筋縄ではいかないものがあるが,ここでは,経緯等はさておき,法案のうち,外部送信規律(いわゆるcookie規制)に関わる部分について,特に個人情報保護法におけるいわゆるcookie規制との構造の違いを中心に速報的に解説する。

 なお,本稿は2022年5月9日時点での情報を元にしている。実務等に利用される場合には,法律としての成案等を必ず確認されたい。

 2022年改正電気通信事業法案は,概要資料によると,①情報通信インフラの提供確保,②安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保,③電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備の内容を含んでいる。

 ①については,


「一定のブロードバンドサービスを基礎的電気通信役務(ユニバーサルサービス)に位置付け、不採算地域におけるブロードバンドサービスの安定した提供を確保するための交付金制度を創設する。」
「基礎的電気通信役務に該当するサービスには、契約約款の作成・届出義務、業務区域での役務提供義務等を課す。」


 という内容を含み,③については,

「携帯大手3社・NTT東・西の指定設備を用いた卸役務に係るMVNO等との協議の適正化を図るため、卸役務の提供義務及び料金算定方法等の提示義務を課す。」
「加入者回線の占有率(50%)を算定する区域を都道府県から各事業者の業務区域(例えばNTT東は東日本、NTT西は西日本)へ見直す。」

 との内容を含む。

 いわゆるcookie規制と関係して論ぜられるのは②の内容であり,

[1]「大規模な事業者※(※大規模な検索サービス又はSNSを提供する事業についても規律の対象とする。)が取得する利用者情報について適正な取扱いを義務付ける。」

[2]「事業者が利用者に関する情報を第三者に送信させようとする場合、利用者に確認の機会を付与する。」

 という二つの内容を含む。

このうち,[1]は2020年改正電気通信事業法案による改正後の27条の5ないし11に,[2]は同27条の12に定められる。

 [1]については大規模な事業者(27条の5により指定)について,情報取扱規程(指定三月以内に総務省に届出,同27条の6第1項柱書)及び情報取扱方針(指定三月以内に公表,同27条の8第1項柱書)の規律を中心としたガバナンス規律を導入するものであるが,指定されて影響を受ける事業者の数は限られると思われる。

 これに対して,[2]は「電気通信事業者又は第三号事業を営む者(内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限る。)」に適用され(同27条の12柱書),「第三号事業」とは,「第百六十四条第一項第三号に掲げる電気通信事業」とされている(同2条7号イ)。

 ここで,「第百六十四条第一項第三号」も2022年改正電気通信事業法案で改正されており,「電気通信設備を用いて他人の通信を媒介する電気通信役務以外の電気通信役務(次に掲げる電気通信役務(ロ及びハに掲げる電気通信役務にあつては、当該電気通信役務を提供する者として総務大臣が総務省令で定めるところにより指定する者により提供されるものに限る。)を除く。)を電気通信回線設備を設置することなく提供する電気通信事業)」とされ,イないしハは以下のとおりである(同164条1項3号)。

イ ドメイン名電気通信役務
ロ 検索情報電気通信役務
ハ 媒介相当電気通信役務

 このうち,ドメイン名電気通信役務は「入力されたドメイン名の一部又は全部に対応してアイ・ピー・アドレスを出力する機能を有する電気通信設備を電気通信事業者の通信の用に供する電気通信役務のうち、確実かつ安定的な提供を確保する必要があるものとして総務省令で定めるものをいう」(同164条2項1号),検索情報電気通信役務は「入力された検索情報(検索により求める情報をいう。以下この号において同じ。)に対応して当該検索情報が記録されたウェブページのドメイン名その他の所在に関する情報を出力する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務のうち、その内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定める電気通信役務」(同4号),媒介相当電気通信役務は「その記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し、又はその送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力する電気通信を不特定の者から受信し、これにより当該記録媒体に記録され、又は当該送信装置に入力された情報を不特定の者の求めに応じて送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務のうち、その内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定める電気通信役務」(同5号)と定められている。

 結局,第三号事業とは何なのか,というと,まず,①「電気通信設備を用いて他人の通信を媒介する電気通信役務」が電気通信役務から除外されているので,電子メールや,クローズド・チャットは該当しない。

 また,②ドメイン名電気通信役務,検索情報電気通信役務及び媒介相当電気通信役務であって,総務省令で定めるところにより指定する者により提供されるもの,についても電気通信役務から除外される。

 このような,①②を除く電気通信役務を提供する電気通信事業であることがまず第三号事業の要件であり,さらに,「電気通信回線設備を設置することなく」であるので,光ファイバ、携帯電話の基地局等の電気通信回線設備を設置して行う事業は該当しない。

 そうすると,どのような事業に適用されるのか,ということが当然の疑問になるわけであるが,電気通信事業参入マニュアル[追補版]での記述からは,「各種情報のオンライン提供」事業(電気通信設備(サーバ等)を用いて、天気予報やニュースなどの情報データベースを構築し、その情報を、インターネットを経由して利用者に提供するもの)や,「インターネット上のショッピングモール」事業(インターネット経由で複数の店舗でネットショッピングを行うことができる「場」を提供するもの)などは該当するように思われる*3

 「個人や企業によるWebサイトの開設(専ら自らの情報の提供を目的とするもの)」事業は「専ら自らの情報を発信する手段として電気通信役務を提供することは、自己の需要に応ずるものであり、他人の需要に応ずるものではないことから、電気通信事業に該当しない」とされているが,「各種情報のオンライン提供」との区別は曖昧であり,「内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者」に関する総務省令案が待たれる。

 しかしながら,「第三号事業を営む者」は外部送信関係規律の対象として総務省令で定められる以前に,その外延が必ずしも明らかではなく,対象となり得るものすべてについて適切に利害関係や実情を加味できたかという立法上の問題があり,対象となるものを全面的に総務省令に委任してしまうことが適当かについても議論があろう。

2 外部送信関係規律の概要

 対象については前述のような問題を指摘した上で,具体的な外部送信関係規律を見ていく。

 条文は以下のとおりである。

(情報送信指令通信に係る通知等)

第二十七条の十二 電気通信事業者又は第三号事業を営む者(内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限る。)は、その利用者に対し電気通信役務を提供する際に、当該利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信(利用者の電気通信設備が有する情報送信機能(利用者の電気通信設備に記録された当該利用者に関する情報を当該利用者以外の者の電気通信設備に送信する機能をいう。以下この条において同じ。)を起動する指令を与える電気通信の送信をいう。以下この条において同じ。)を行おうとするときは、総務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信されることとなる当該利用者に関する情報の内容、当該情報の送信先となる電気通信設備その他の総務省令で定める事項を当該利用者に通知し、又は当該利用者が容易に知り得る状態に置かなければならない。ただし、当該情報が次に掲げるものである場合は、この限りでない。

 一 当該電気通信役務において送信する符号、音響又は影像を当該利用者の電気通信設備の映像面に適正に表示するために必要な情報その他の利用者が電気通信役務を利用する際に送信をすることが必要なものとして総務省令で定める情報

 二 当該電気通信事業者又は第三号事業を営む者が当該利用者に対し当該電気通信役務を提供した際に当該利用者の電気通信設備に送信した識別符号(電気通信事業者又は第三号事業を営む者が、電気通信役務の提供に際し、利用者を他の者と区別して識別するために用いる文字、番号、記号その他の符号をいう。)であつて、当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により当該電気通信事業者又は第三号事業を営む者の電気通信設備を送信先として送信されることとなるもの

 三 当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信先の電気通信設備に送信されることについて当該利用者が同意している情報

 四 当該情報送信指令通信が次のいずれにも該当する場合には、当該利用者がイに規定する措置の適用を求めていない情報

  イ 利用者の求めに応じて次のいずれかに掲げる行為を停止する措置を講じていること。

   (1) 当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により行われる利用者に関する情報の送信

   (2) 当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信された利用者に関する情報の利用

  ロ イに規定する措置、当該措置に係る利用者の求めを受け付ける方法その他の総務省令で定める事項について利用者が容易に知り得る状態に置いていること。

 まず,どのような行為に規律が掛かっているのかというと,「当該利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信(利用者の電気通信設備が有する情報送信機能(利用者の電気通信設備に記録された当該利用者に関する情報を当該利用者以外の者の電気通信設備に送信する機能をいう。以下この条において同じ。)を起動する指令を与える電気通信の送信をいう。以下この条において同じ。)を行おうとするとき」であるから,cookieとの関係でいえば,cookieを埋め込もうとするときに規律が掛かる。

 これは,個人情報保護法が個人情報の「取得」を規律しているのよりも一段階早い。

 その際には,「総務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信されることとなる当該利用者に関する情報の内容、当該情報の送信先となる電気通信設備その他の総務省令で定める事項を当該利用者に通知し、又は当該利用者が容易に知り得る状態に置かなければならない」とされている。

 「通知し」又は「容易に知り得る状態に置」く,なので,同意までは必要ない。

 どのような事項を通知等しなければならないかについては,①当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信されることとなる当該利用者に関する情報の内容、②当該情報の送信先となる電気通信設備,については法律案レベルの記載であるが,③その他は総務省令で定められる。

 ただし書には「情報(=情報送信機能により送信されることとなる当該利用者に関する情報)」の種類によって四つの例外が定められているが,これは二つずつのグループに分けられる。

 まず,総務省が「措置を取ることを不要とする情報」とカテゴライズしているもので*4,「当該電気通信役務において送信する符号、音響又は影像を当該利用者の電気通信設備の映像面に適正に表示するために必要な情報その他の利用者が電気通信役務を利用する際に送信をすることが必要なものとして総務省令で定める情報」(1号)と,「当該電気通信事業者又は第三号事業を営む者が当該利用者に対し当該電気通信役務を提供した際に当該利用者の電気通信設備に送信した識別符号(電気通信事業者又は第三号事業を営む者が、電気通信役務の提供に際し、利用者を他の者と区別して識別するために用いる文字、番号、記号その他の符号をいう。)であつて、当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により当該電気通信事業者又は第三号事業を営む者の電気通信設備を送信先として送信されることとなるもの」(2号)がある。

 これらも,1号については,「利用者が電気通信役務を利用する際に送信をすることが必要なものとして総務省令で定める情報」として,情報の種類で画されているのに対して,「当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により当該電気通信事業者又は第三号事業を営む者の電気通信設備を送信先として送信される」として,送信先で画されている。

 後者(2号)は,送信先が「当該電気通信事業者又は第三号事業を営む者の電気通信設備」ということで,いわゆるファーストパーティcookieを除外する趣旨である。

 他方,前者(1号)は,cookieの種類でいえば必須cookieであるとか,機能cookieと呼ばれるcookieで取得される情報であるが,必須cookieや機能cookieは一般的にファーストパーティcookieであり,2号でカバーされない1号の情報がどのようなものであるかは,現時点では判然としない。

 外部送信の規律は,cookie以外にも,広告モジュール等の規律も意図しているが,広告の表示はより一層「電気通信役務を利用する際に送信をすることが必要なもの」とはいえず,1号が独自に規律すべき情報については,その有無を含めて総務省令案の議論が待たれる状況である。

 3号及び4号は,同意及びオプトアウト(送信オプトアウトと利用オプトアウトがあり,いずれかでよいことになっている)により送信される情報についての例外である。

 通常は,「当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信されることとなる当該利用者に関する情報の内容、当該情報の送信先となる電気通信設備その他の総務省令で定める事項を当該利用者に通知し、又は当該利用者が容易に知り得る状態に置かなければならない」とされているのであるから,同意及びオプトアウトの前提として,送信指令通信により送信されることとなる当該利用者に関する情報等は当然に通知されているはずであって,3号及び4号の存在意義がどこにあるのかは一見不明である。

 この点は総務省の資料等でも現時点では特段解説はないが,個人情報保護法でいう個人関連情報の取得の同意(個人情報保護法31条)のように,送信先電気通信設備の管理者が同意やオプトアウトの措置を取っておくという方法がある。

 他方,この場合,個人情報保護法では提供先において個人関連情報の取得の同意があることを確認しなければ送信することができないが,送信指令通信について確認義務は定められておらず,利用者に対して一切の通知義務もないことになる。

 同意及びオプトアウトが包括的に行われることも排除されておらず,3号及び4号には省令委任も存在しないので,運用によっては外部送信規律が形骸化するのではないかという懸念はある。

3 個人情報保護法によるいわゆるcookie規制との比較

 2022年改正電気通信事業法案による外部送信規律の概要は以上のとおりであるが,個人情報保護法によるいわゆるcookie規制との比較をしておこう。

 前述のとおり,2022年改正電気通信事業法案による外部送信の規律は,「情報送信指令通信」に掛かっており,その主体(「第三号事業を営む者」についての問題は前述した)はcookieとの関係でいえば,cookieを利用して外部(サードパーティ)に情報を送信させようとするもの(タグ等を設置するウェブサイトの運営者)である。

 他方で,個人情報保護法において,サードパーティーcookie等による個人情報の取得に関しては,取得主体が規律の対象であって,タグ等を設置するウェブサイトの運営者は,個人情報の「提供」を行っているとは表されていない。

 このように,個人情報保護法におけるcookie規制の考え方と,2022年改正電気通信事業法案による外部送信規律におけるcookie規制の考え方は,着目点が異なっているということを理解することが重要である。

以上


*1 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/platform_service/index.html

*2 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/sd_governance/index.html

*3 https://www.soumu.go.jp/main_content/000493134.pdf

*4 プラットフォームサービスに係る利用者情報の取扱いに関するワーキンググループ(第10回)(令和4年3月16日)【資料3】「利用者に関する情報の外部送信の際の措置について」8頁。

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。 このコラムを書いた弁護士に
問い合わせるにはこちら
関連するコラム
↑TOP