弁護士コラムバックナンバー

認定支援機関の役割とM&A取引

弁護士法人ひかり総合法律事務所
代表社員 藤原宏高

 財務及び会計等の専門的知識を有する者による支援事業を通じ、課題解決の鍵を握る事業計画の策定等を行い、中小企業の経営力を強化すること等を目的として、平成24年8月30日施行された「中小企業の海外における商品の需要の開拓の促進等のための中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律等の一部を改正する法律」により、経営革新等支援機関としての認定を受けた「認定支援機関」が全国に多数誕生した。

認定支援機関の業務は多肢に渡るが、もっとも期待された業務は、金融支援等を必要とする中小企業が実施する経営改善計画の策定を支援する業務(認定支援機関による経営改善計画策定支援事業)である。

認定支援機関になることが想定された専門家は、既存の中小企業支援者、金融機関、税理士・税理士法人等の中小企業の支援事業を行う者であり、その中には弁護士も含まれていたことから、当時、第二東京弁護士会の弁護士業務センターの委員長を務めていた私は、経済産業省の担当者と私的な勉強会を数回開催し、支援対象の要件、支援者チームの構成方法、支援ツールのあり方などを議論した。要は、中小企業のために、認定支援機関はどうすれば良いのか、特に弁護士としてのかかわり方を探ることであった。

しかしながら、平成25年3月に、認定支援機関による経営改善計画策定支援事業に対して、「2万社を対象に総額300万円までの費用の2/3を補助」することが発表されたものの、中小企業再生支援協議会を通じた支援方法、及び「認定支援機関に主要金融機関が含まれない場合は、事業者または認定支援機関が、主要金融機関が経営改善計画策定支援について協力することの確認書面を取得し、支援センターに提出する」ことを条件とする支援に限定されてしまった。

認定支援機関に政府から補助金が交付される以上、金融機関の同意は不可欠との配慮からであろうが、弁護士の立場からは、違和感が残る結果となった。多額の負債に苦しむ中小企業と、その貸し手である金融機関とは、本来は利害が相反する関係にある。中小企業の立場からすると、金融機関から再生支援はして欲しいが、債務カットをしないで経営改善計画を策定したとしても、景気変動の荒波に揉まれた場合、経営改善計画通りに事業を経営できるか、多大な不安が残るのではないだろうか。

他方、中小企業のM&A取引は、事業再生にも有力な手段であり、有力な買い手が見つかれば、債務の肩代わりなど、多大な効果が期待されるところである。認定支援機関が、M&A取引の売手側アドバイザーとして、対象企業の財務分析等を行い、M&A市場に案件を提供する役割を担うことが出来れば、中小企業の事業再生は、さらに拓けたものとなると思われる。また、弁護士が中小企業から再生の相談を受けた場合にも、破産や廃業に加えて、M&A取引をも加味してアドバイスを行うことが出来れば、M&A市場はさらに拡大することが期待される。

従って、多数の認定支援機関が、中小企業の支援者として、かかるM&A取引のアドバイザーの役割を担うことが重要であると考える。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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