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ゴディバの日本事業売却

弁護士法人ひかり総合法律事務所
代表社員 藤原宏高

(このコラムは、2019年3月にM&A情報広場に掲載されたものです。)

第1 はじめに

 チョコレートで有名な「ゴディバ」が売却される、こんなニュースが飛び込んできた。

 ゴディバは、ベルギーのブリュッセルでマスターショコラティエだったドラップス氏が1926年に創業したと言われているが、1972年に日本に進出し、東京日本橋三越に第1号店をオープンした。現在では、世界中で愛されているプレミアムチョコレートブランドへと成長している。

 他方、ゴディバの経営権は、2007年トルコ企業であるユルドゥス・ホールディングス(以下「Y・H」という)が買収し、日本国内での輸入販売は日本法人であるゴディバ・ジャパン株式会社(以下「G・J」という)が行っている。

 2019年2月21日付日本経済新聞に発表されたゴディバの売却とは、ゴディバの日本事業等(詳細は後述する)を、G・Jの親会社であるY・Hが、日本中国韓国を拠点とする投資ファンドであるMBKパートナーズに売却するというものである。

 G・Jは1994年に設立され、資本金100,000,001 円、ゴディバのベルギー法人(Godiva Belgium S.p.r.l)が100%株式を保有しており、日本国内の店舗数は約300店と言われている。

 ゴディバの争奪戦には、三菱商事グループをはじめとして、いくつかの日本企業も手を挙げたようであるが、最終的には、投資ファンドMBKパートナーズ株式会社(以下「MBK」という)が買収に成功した。

 Y・Hは、トルコ政府と米トランプ政権との関係悪化でリラが下落したため、2007年の大型買収に伴う外貨建て債務の負担を軽減するため、G・Jの売却手続きを始めた、と言われている。

 MBKはアメリカ・カーライルグループ出身者によって設立されたアジア系投資ファンドで、これまでにもユニバーサルスタジオジャパン、田崎真珠、コメダ珈琲、アコーディアゴルフなどに投資してきた実績がある。

第2 買収対象

 G・Jの2月20日付発表によれば、買収対象は韓国・オセアニア地域のゴディバ事業を含むG・Jと、ベルギーの工場で、全体の売り上げは400億円程度、その9割は日本事業のようである。

 ゴディバのブランドは、Y・H側が保有しているため、Y・H側は、MBKに対して永久ライセンスを付与すると言われている。

ゴディバ日本事業のEBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)は100億円弱と言われており、買収金額は、1100億円超と発表されているので、買収金額の対EBITDA比は10倍を超えていることからも、相当程度高い買い物であったことがわかる。

 ゴディバの日本事業の収益が一段と拡大することを見込んでの買収価格ともいえよう。

 なお、買収契約の詳細は公表されていないので、G・Jの株式を誰がどのようにして売却するのかは、不明である。

第3 出口戦略

 MBKは投資者の資金で運用する私募ファンドで、バイ・アウトファンドと言われていることから、5年程度で投資金額を回収する出口戦略が必要となる。

 MBKは、日本を中心に中国や韓国でも活動しており、強みを生かせる、ゴディバの事業を一段と拡大し、3-5年後を目途に新規株式公開(IPO)を検討すると述べている。

 他方、ゴディバの日本事業は2010年からの7年間で売上が3倍に拡大してきたものの、新規出店の余地は限られているとの指摘もある。しかしながら、韓国での本格的なブランド展開には伸びしろが期待できると思われる。

 ブランド力を生かした新規株式公開を出口戦略としている投資ファンドと、日本国内事業とのシナジー効果を期待していた日本企業とでは、提示する買収金額に差が出るのはやむを得ないものともいえよう。

以上 

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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