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社外監査役業務と法的思考

藤原 宏高

 平成18年度に第二東京弁護士会の副会長職を拝命したことが契機となり、同年4月より某上場企業の社外監査役をさせていただいております。当初は、まったく手探りの状態でしたが、丸7年以上経過して、今では、取締役会に上程された重要案件の審議に意見を述べたり、会社の経営方針について議論したり、海外工場の監査を行うなど、緊張感溢れる貴重な経験を通して視野が広まったことに大変感謝しています。

 私の社外監査役の業務の視点は、(1)担当部署は、課題を認識しているか、(2)担当部署は、課題を解決する手段を見出せているか、(3)担当部署は、課題を解決したか、の3段論法です。

 整理してしまえばまったく当たり前の単純な思考方法ですが、これこそ法律家の法的思考の真髄であると考えています。課題を認識することは、問題を解決する上でもっとも重要なことであり、課題を認識しない解決はありえません。

 しかし、実際には作業に追われる現場では課題が見えないことの方が多いのです。ここに外部から見る視点の重要性があり、会社の外部から法的思考を持って検証するからこそ、課題が見えたりすることがあると考えています。会社のリスクマネジメントの世界でも、同様な思考方法が有益です。

 かかる思考方法は、特許の明細書では以下の通り使われています。すなわち、

(1)発明の属する技術の分野における従来の技術や先行技術文献を前提として、

(2)特許を受けようする発明が課題にしている従来技術の問題点などを記載し、

(3)課題を解決するための手段を請求項に記載し、

(4)特許を受けようとする発明が、従来の技術に比べて優れているといえる点を、発明の有利な効果として記載します。

 私は自分の趣味の世界においても、自らの課題を認識し、課題の解決ができることが楽しいと感じております。まさに人生は生涯学習であり、ひとつの課題が解決できると、次の課題が見えてきて、新しい世界が開けてくるのです。

 最後に、平成25年5月に成立した共通番号法について、一言感想を述べさせていただきます。同法の施行によって、平成28年より共通番号の利用が開始されるとのことですが、企業が同法に対応するために解決すべき課題はとてつもなく大きく、かつ深刻なものであるといわざるを得ません。企業の各部門毎に課題を抽出して全社的に課題を集約することによって、はじめて課題の認識が可能となりますが、企業の経理・財務部門と社会保険・労務部門との間で、どのようにして共通番号を管理するシステムを連携させるのか、まだ課題の解決方法は見えておりません。

以上

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