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会社法831条等の類推適用について

1 はじめに

 会社法831条は、株主総会等の決議に一定の瑕疵がある場合に、株主等が訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる旨規定しています。

 「株主総会等の決議の取消しの訴え」といわれるものです。

 同様の規定は、一般社団法人法266条1項にも定められています。

 これら決議取消しの訴えは、株主総会や社員総会以外の決議、例えば権利能力なき社団(町内会、サークル、マンション管理組合など)の決議にも類推適用されるのでしょうか。

 権利能力なき社団においては、多数決原理に基づき意思決定がされているため、決議に瑕疵が存在するケースは少なくないように思います。

 そこで、この点について検討してみたいと思います。

2 裁判例

 結論からいうと、裁判所は、権利能力なき社団の決議に会社法831条や一般社団法人法266条1項の類推適用を否定するのが一般的です(東京地判平成22年8月27日判決、東京地判平成24年12月7日判決、千葉地判令和5年11月16日等)。

 理由としては、少し形式的なものですが、「決議取消しの訴えのような形成の訴えは、従前の法律関係に変動を生じさせる判決を求める訴えであって、これを認めることは、裁判所に対して判決によって一方的に当事者間の法律関係を変動させる権限を与えることを意味するのであるから、法律に明確な規定がある場合に限り許容される」というものです。

3 実務上の対応

 以上の裁判所の考え方に基づくと、権利能力なき社団の決議の瑕疵を争うためには、一般の無効確認の訴えを用いることが多いと思います。

 したがって、まずは、確認の利益の有無について検討が必要となります。

 さらには、決議が無効となるための基準をどのように考えるべきか検討する必要があります。

 この点については、「権利能力なき社団における多数決原理」の要保護性を、株式会社や一般社団法人と比較してどのように考えるかがポイントになるでしょう。

 権利能力なき社団における多数決原理は、権利能力なき社団を権利能力なき社団たらしめている根幹原理であるという点を重視すれば、厳格な基準で判断すべきということになります。

 ここは、様々な考え方があると思われますので、まずは、弁護士に相談されることをおすすめいたします。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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