弁護士コラムバックナンバー

中小企業の事業承継とM&A

弁護士法人ひかり総合法律事務所
代表社員 藤原宏高

 日本の中小企業は、これまでの経営者らの長年に渡る地道な努力によって様々な技術や技能を保有しており、我が国の経済を支える屋台骨であることは広く認識されている。このことから、後継者不足に悩む高齢化した経営者たちが円滑に事業承継できるようにするための様々な施策が実施されてきた。

 また、事業承継の困難さから、これまでの施策に加える形で第三者に対する会社の引継ぎのための手法として、M&Aの活用が叫ばれるようになった。

 幸いなことに、私は2016年2月に、中小企業の事業承継にこれまで努力されてこられた専門家らと共同で「中小企業の事業承継 M&A活用の手引き-円滑な事業引継ぎのために-」(「藤原宏高・幸村俊哉」編著、発行(株)経済法令研究会、以下「本書」という)を出版することができた。

 本書の前半では、これまで中小企業庁が行ってきた事業承継のための様々な施策を解説し、その中でも「M&A等を活用した事業引継ぎガイドライン」を詳しく解説した。

 私が編集した後半では、

1 一般論としてM&Aの手順を簡単に説明するとともに、
2 第三者に対する中小企業の引継ぎのためには中小企業のM&A市場を広げる必要があること、
3 そのためには、これまで中小企業にかかわることが多かった税理士、公認会計士、弁護士等の士業専門家たち(以下「士業専門家」という)が、M&Aの譲渡企業側代理人の立場に立って、中小企業をM&A市場に送り出すための方策を説明するとともに、
4 譲受企業側代理人の立場で行うべき方策や、
5 簡単なM&A契約書等の説明も行った。

 実際に譲渡企業側代理人に就任してみると、士業専門家同士で協力しなければ解決できない課題に遭遇することも多いのが現実である。

 弁護士の立場からは、これまでの弁護士の枠を超えて、企業の会計にある程度精通すると共に、M&Aに理解を示す士業専門家との幅広いネットワークを構築する必要があろう。

 他方、税理士や公認会計士の立場からも、これまで関与してきた企業の決算書の内容について、もう一度見直したり、企業を指導する等の努力が必要であると思われる。

 譲渡企業側で作成した決算書がどこまで信用できるかが一つのポイントであり、仲介業者が神経をすり減らす問題だからである。

 監査を受けることが想定されていない中小企業のM&A市場を活性化させるためには、決算書の信憑性を一定レベルまでかさ上げする必要があることを提言したい。

以上

関連するコラム
↑TOP