2017年3月

未公開株の株価

仲田 信範



 上場株は日々の取引が公開されることにより,誰もが株価やその変動を知ることができます。上場株ではない,いわゆる未公開株は株価は表示されません。

 未公開株についても通常の売買,相続,贈与等により移転します。これらの場合,価格は自由に取決めすることができます(価格について税務上認められないことがあるので注意は必要です)。

 会社が定款変更する場合に,その定款変更に反対した株主は,会社に対して株式の買取請求ができます。また譲渡制限株について株主が会社に譲渡の承諾を求めたのに対して会社が不承認した場合には,会社もしくは会社が指定した第3者に株式の買取を請求することができます。これらの場合,当事者間で売買価格が決められない場合,裁判所に対して価格の決定を求めることができます。

 では,株式の移動がなされる場合,株価はどのようにして株価を定める(定められる)のでしょうか。

 株価の算定の仕方については,いろいろな手法があり,価格も千差万別です。大きく分けて以下の3つの手法があります。

  インカム・アプローチ
  マーケット・アプローチ
  ネットアセット・アプローチ

 インカム・アプローチは対象会社が生み出すキャッシュ・フローを評価する方法です。すなわち少ない資産で大きな価値を生み出す会社が高い評価を受けます。DCF方式とか,収益還元方式,配当還元方式と言われる方式です。配当還元方式について,会社の配当額は収益と関係なく一定額に据え置かれている場合や,全く配当がなされていない場合があります。

 マーケット・アプローチは上場している同業他社や類似取引事例等,類似する会社,事業,取引事例と比較して相対評価する方法で,類似業種比準方式,類似取引方式と言われる方式です。

 ネットアセット・アプローチは,会社の持っている純資産に着目して評価する方式で,簿価純資産方式,時価純資産方式と言われる方式です。

 各方式には次のような特徴があります。客観性に優れているのはネットアセット方式,市場での取引環境を反映しているのはマーケット・アプローチ,将来の収益獲得能力や個性を反映しているのがインカム・アプローチです。

 どの方式を採用するかは,株式の移動目的により左右されます。たとえば,その会社を丸ごと売買する場合には,ネット・アセットとインカムアプローチを併用すべきでしょう。すなわち会社の基本財産とキャッシュを生み出す能力の双方に着目して決めなければならないからです。

 相続とか贈与の場合には節税効果に着目して評価すべきですが,あまり偏った評価による価格は税務署から否認されるので留意が必要です。

 定款変更に反対した株主が会社に買取請求した場合や,株主からの譲渡承諾請求を不承諾した会社が買い取る場合,裁判所はどのようにして株価を定めるのでしょうか。一概には言えませんが,創業して間もないベンチャーとして成長力の大きい会社について収益還元方式のみによって評価した例(東地裁H20.1.22決定),観光汽船会社について,DCF方式0.35,純資産方式0.35,配当還元方式0.3の割合で加重平均して評価した例(東地裁H26.9.26決定)があります。いずれも収益性に重心を置き,それに純資産方式を加えており,配当還元方式の比重は低いのが特徴です。

 株価の評価でよく問題とされるのは,マイノリティディスカウント,非流動性ディスカウント,非事業用資産という要素です。

 マイノリティディスカウントというのは,少数株の場合,株主総会や会社経営に与える影響力が小さいので,支配株に比べて評価を減らすという考えです。この考え方は通常の株式の取引の場合には該当する場合が多いとおもいますが,裁判所が株価を定める場合には,裁判所は公正な価格を算定しなければならないので,同じ会社の株式について支配株と少数株とで異なる株価を定めることには強い反対意見があります。

非流動性ディスカウントについても同様です。非流動性ディスカウントというのは,未公開株で少数株の場合,市場性がないので流通性が乏しいことから,株式の価値を割り引いて評価するという考え方です。最高裁は株価の評価方式として収益還元方式を採用した場合には,非流動性ディスカウントを考慮すべきではないという考え方を示しています(最高裁H27.3.26決定)。

 非事業資産というのは,会社は,事業用として使用している財産のほかに,事業とは直接関係のない不動産や資産として持っている持株や有価証券,その他現金・預金等を指します。これらの資産は純資産方式,すなわちネット・アセットアプローチの場合には株価に反映されますが,インカム・アプローチの場合には直接的に株価に反映されません。インカム・アプローチの場合でも,非事業資産を企業価値の一部として株価の算定の基礎に算入する考え方が一般ですが,どこまで算入するかについては議論があります。

 以上で述べたように,未公開株の株価の算定については,通常の取引の場合か,それも支配株か少数株か,相続・贈与等であるのか,裁判所による算定かによって評価方式についても,ディスカウントをすべきかどうかについても大きく異なってきますので,評価の仕方について,一概に論じることはできません。場面や立場ごとに区別して議論していく必要があります。

 また税務上の問題があります。株式を第3者に譲渡する場合には一律20%の分離課税で済みますが,株式を発行会社に買い取ってもらう場合には,みなし配当とされ,20%の分離課税ではなく,総合課税の対象となりますので,金額が大きい場合には課税について留意が必要です。

 

以上


                

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