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都市再開発法に基づく第一種市街地再開発とどう向き合うか

小林 弘卓

 最近、建築費の高騰などから、ところによっては再開発計画の遅れが散見されるものの、再開発事業が活発に誕生していることに変わりはなく、当方にも再開発に関する相談は相変わらず多く寄せられている。

 相談内容としては、その立場に応じて分けると、そもそも再開発に反対する立場からこれを阻止するにはどうしたらよいかというもの、地権者として再開発には賛成の立場であって、利益の最大化を実現するにはどうしたらよいかというもの、また、テナントの立場からは営業補償の問題やそもそもいつまでこの場所で営業できるのかといったもの等である。

 以下では、各立場に応じて向き合い方を少し話していきたい。

イ.再開発に真に反対する場合

 この場合、当の再開発の進捗状況と当の再開発区域内における所有地の割合やその位置が大事なポイントとなる。

 既に本組合が成立している段階では同意率(賛成者人数の割合と面積割合)も9割程度と予測できるので、先ず再開発を阻止することは難しい。

 やはり遅くとも準備組合の段階までに反対のための戦略を立て実行しなくてはならない。

 再開発から外れる方法も皆無ではない。計画区域内外での場所の付け替えや計画区域外の代替地の提供・紹介を受けるなどである。この場合は更にデベロッパーとのタフな交渉が必要になる。

 なお、単に自らの利益を最大化するために再開発反対を標榜しても、結局何も奏功しないまま徒に時間だけが過ぎ、強制的に明渡しを執行されて終わる事にもなりかねないので注意すべきである。

ロ.再開発に賛成する場合

1)準備組合あるいは本組合の段階で、組合・デベロッパー等から各種同意書面への押印を求められることになるが、押印に際しても十分な検討が必要である。

 一方、各組合の発起人や役員への就任を打診されることもある。

 この場合、再開発に賛成の場合は、参加して再開発に貢献できること、再開発事業についてより深く知る事ができること、デベロッパーとの顔つなぎとなることなどを考慮して判断することが肝要である。

 但し、役員・理事などは再開発組合を推進する側となるため、地権者として自らの利益を最大化するには弁護士に依頼するなど、推進する側と個人とは切り離して参加していくことが必要である。

2) 所有する従前資産(現在の資産)が収益物件の場合、自身の関係会社などで無償で使用している場合には早い段階で契約書を備えて賃料の授受を行うことが得策の場合も有る。

 組合が算出する従前資産の評価に不満だという場合には、先ずは組合が縦覧に付する権利変換計画案の縦覧期間内に組合宛てに「意見書」を提出する。

 その意見書が不採用となった場合には収用委員会に対して組合の権利変換計画=従前資産の評価に不服である旨の裁決申請を行い、収用委員会の採決を求めることもひとつの方法である。

 また、従前資産を従後資産(建築完了後に取得する資産)に権利変換する場合、原則は同一用途(従前資産が店舗であれば従後資産も店舗、同様に事務所は事務所、住居は住居)であるが、従前資産が店舗や事務所でも従後資産で住居を取得できる可能性も有ることに留意すべきである。

ハ.テナントの立場

 準備組合が設立される頃からテナントに対しては、いずれ再開発になると引っ越さなければならないとの理由で代替物件の紹介とともに早期転出を勧められることがある。

 また、賃料を低くする代わりに普通賃貸借契約を定期賃貸借契約で契約し直すことを提案されたりすることもある。

 これらも慎重に対応しないと、本来受けられる損失補償が受けられなくなることもある。

 テナントについては、組合との損失補償の交渉が大切であるが、この場合再開発の進捗状況、業種や営業成績、営業年限などにより交渉の仕方も変わってくるので、やはり専門家の知見を聞くべきである。

 テナントから設備投資をしたいが再開発が迫っているため躊躇しているとの質問もよく聞く。時期にもよるが新たに設備投資を行っても、経年による減価償却は発生するものの補償を受けられるケースがある。

 尚、稀では有るが、定期賃貸借の契約であっても再開発の本組合設立前後で定期賃貸借契約終結時期までに日数が残存している場合には損失補償を受けられるケースも有る。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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