弁護士コラムバックナンバー

再開発事業と非弁活動

小林 弘卓

1 再開発事業対象地区内にあるテナントから相談を受けたときのこと。これまで立ち退きに関する条件の交渉は、ある不動産業者に一任していた。ところが、その業者からは組合との交渉の経過の報告もなく、最近になって「この条件で組合と話がつきそうだから、これで合意すべきだ」と強行に説得されているが、果たしてこれに応じるべきかとのことであった。

2 もちろん、この不動産業者は、有償で交渉を担当している。再開発事業においては、この手の業者が結構暗躍している。彼らは不動産に精通しているとのふれこみで、テナントや地権者らに近づき、それほどの好条件でないにもかかわらず、組合からの条件を依頼者に飲ませ、依頼者から高額な報酬を取るばかりか、時としては組合とも通じていて立ち退き条件について組合と出来レースを演じることさえあるのである。

3 私は、相談者に対し、この業者の行為は弁護士法違反の疑いが強いものであること、提案された条件については、必ずしも最適なものではないことなどを伝えた。その後、相談者は、その業者との委任契約を解除し、私に組合との交渉を依頼してきた。受任後、私は、このような不動産業者と交渉を行ってきた組合にも抗議を行い、交渉を仕切り直すことを認めさせた。結果として、不動産業者がテナントを説得しようとしていた条件は、テナントに極めて不利な内容であることが判明し、最終的に、適切な条件で組合と合意にいたることができた次第である。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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