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弁護士日記(セミナーの依頼を受けました) ~働き方改革関連法~

清水 敏

1 弁護士の業務

 弁護士日々の業務は,紛争の交渉,裁判,企業・公共団体の役員・顧問活動,法律関係書籍の執筆など多岐にわたりますが,セミナーなど講演の依頼も受けることがあります。

 特に法律の改正があると,その改正法に対応するためのセミナーが活発に催され,講師として法律業務を担う弁護士が登壇をする場合があります。

 今年も多数の法律が成立していますが,その中で,企業や労働者がその対応に迫られる「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(多数の法律の改正が含まれていますが,以下まとめて「働き方改革関連法」といいます)が本年から施行されるため,御多分にもれず,本年11月に開催される主に都内の中小企業・ベンチャー企業向けの働き方改革関連法のセミナー講師の仕事をいただきました。

 これからセミナーの準備をするところですが,働き方改革関連法は,企業,労働者にとっては対応が欠かせないものです。セミナー主催者側からは,関心の高い非正規雇用の処遇,同一労働同一賃金などなどについて厚く解説して欲しいとも要望を受けています。

 そこで,以前も労働法改正について本コラムを書きましたが,今回は本年施行される働き方改革関連法に関して基礎的な内容を紹介したいと思います。

2 働き方改革関連法

(1)働き方改革関連法の目的

 昭和の高度成長,平成における経済の沈滞を経験して,日本経済は多くの課題に直面しています。毎日の新聞に課題記事となっていない日は無いと言っていいでしょう。

 働き方改革関連法は,直面する課題のうち特に少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少への対応,多様化する働き方のニーズへの対応に着目して,生産性の向上,多様な就業機会を確保しようとするものです。

(2)長時間労働の是正

 戦後,経済復興を実現できた力の一つは,個々の労働者の努力といえる長時間労働でした。しかし,長時間労働による弊害(健康被害など)が明らかになっています。また,個人的な意見としては,単純な長時間労働では革新的なアイディア,技術は生まれてこないのではないでしょうか。

 そのような背景のもと,働き方改革関連法は時間外労働の規制の強化をしています。

 具体的には,時間外労働の上限を原則的に月45時間,年360時間,臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間,単月100時間未満,複数月平均80時間を限度とする設定がなされています(業種による例外があります)。

 残業に関連して,労働時間の把握の実効性を確保するために,労働時間の状況を使用者の現認や客観的な方法による把握を原則とすることが定めらました。企業によっては,労働時間の管理を個々の労働者に任せているところもあると思われますが,改善をしていく必要があります。

 残業代に関しては,中小企業には月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率についての猶予措置がありましたが,これが廃止されますので注意をしましょう。

 また,労働者の心身のリフレッシュを図るための次の対策がなされています。

 一つ目は,年次有給休暇の確実な取得をさせるために,10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し,使用者は5日について,毎年,時季を指定して与えなければならないことされました。

 二つ目として,業務間インターバル制度の普及促進するために,事業主は,前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならないとされました。

(3)非正規雇用対策

 正規・非正規労働者との不合理な待遇差を解消するため,同一企業内において待遇の差があるときは,個々の待遇ごとに,当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化しています。

 平等の確保を目的とするのもですが,企業や社会が分断なくして持続していくためには,フェアであることは最低限必要なものであると思います。

3 おわりに

 セミナーの主催者から,「皆にわかりやすくお願いします」と指示を受けています。

 法律家としては,法律の条文を基に解説をするとわかりやすいのですが,法律家ではない多数の企業,労働者を聴講者とする場合には条文よりも,条文の内容をかみくだいたパワーポイントのレジュメを準備しなくてはなりません。

 働き方改革関連法の目的にもありますが,「多様な」聴講者のみなさまに法律をわかりやすく聴いてもらうため,これが良い社会の実現になるとの大志をもって,レジュメをキーボードを叩いて叩いて,今日も夜が更けそうです。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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