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フリーランスという働き方について考える

山田 康成

 フリーランスという働き方をする人が増えています。

 2020年に行われた内閣官房による統一調査では、462万人とも言われていますが、その他の統計では、民間の調査ではもっと多い数字もあったりして正確な人数は掴めていません。

 フリーランスといっても、色々な働き方があり、様々な職種があるため、実際の数字を把握するのは、困難だからだと思います。

 しかし、この働き方をする人は、確実に増えています。

この原因は、人生100年時代と言われる中で、65歳、これからは70歳や、それ以上働くことなるかもしれないことが背景にあると思います。

 これだけ長い期間働くことになると、一つの会社だけで働くことを考えず、その手段は、転職だけでなく、これまでの経験を活かして、会社員として働くこと以外の選択肢を考えることは、自然なことともいえます。

 また、会社に働きながらも、兼業・副業をすることが認められる時代になってきました。

 兼業・副業の選択肢として、会社に勤めつつ、別に、フリーランスとして働くことを考える方も増えています。

 原則、フリーランスの方には、労働基準法をはじめとする労働法上の労働者とはされません。

労働法制の適用がないだけでなく、労働基準監督署などにある総合労働相談コーナーでの相談も受けることが出来ません。

 そこで、フリーランスの方に、お仕事上のトラブルがあった際の相談をする窓口として、私が所属する第二東京弁護士会ではフリーランス・トラブル110番という相談窓口(https://freelance110.jp)を立ち上げ、私もこの相談事業の立ち上げに関わってきました。

 この相談窓口は、フリーランスの方への法律相談だけでなく、紛争解決のための裁判外での紛争解決手続きとしての和解あっせんという手続きも無料で受けることができるという相談窓口です。

 2020年11月からはじめて1年を経過しましたが、年間の相談件数は約4000件で、今もその相談件数は、増え続けています。

 事業開始から1年間、私は、この相談の現場に立ち会ってきました。

 労働法制の適用がないということは、解雇権濫用法理の適用や、割増賃金などの労働者保護の法律の適用がありません。

 民法の一般原則の他は、全て契約に基づくことになります。

 そのかわり、自由に活動できるというメリットもあり、一定の不安定さを覚悟してフリーランスになったのだから、それは自己責任だという意見もあります。

 たしかにその一面もありますが、これまで数多くの相談に接してきて、自己責任という言葉だけでは解決できない面もあることを感じてきました。

 フリーランスの方のお仕事上のトラブルの中で、一番、多いのはが報酬の未払いに関するトラブルです。

 その問題が起きる、根本的な原因は、基本的にはフリーランスに支払われる報酬が後払いということに起因していると感じています。

 そんな当たり前のことをと思われるかもしれませんが、仕事をした後に、発注者の評価が入った後に、報酬が支払われるという構造は、フリーランスにとって根本的に厳しい立場に立たされることになります。

 労働法制上の労働者として認められれば、労働基準法で認められた賃金全額払いの原則があります。

 しかし、フリーランスの場合は、仕事をしてもそれが発注者の納得のいくものではなかったとか、フリーランスが仕事をした後に、色々発注者から意見が出て、契約どおりの報酬が支払われないというケースが多いのです。

 他にも、フリーランスの方から、都合により業務委託契約を解消したいと申し出ると、発注者が、辞めてもらわれると困る、辞めると損害賠償請求をすると言われ、フリーランスは辞めることが出来なかったりする事例も多いです。

 フリーランスの方も急に契約を解除したら発注者に迷惑をかけるだろうからと、解除するタイミングも発注者に配慮しても、なかなか発注者が辞めることを認めてくれない相談が多く寄せられています。

 いつまでも、この仕事を、続けることができないと思い、思い切って辞めてしまった場合は、報酬が後払いであるため、辞めた後に、最後に支払われるはずだった報酬が支払われないという事例がとても多いのです。

 このように、本来自由であるはずのフリーランスが、全くフリーでない立場に立たされていることもあるのです。

 なにかトラブルがあると、報酬が後払いであることから、交渉においても弱い立場に立たされることも多く、自己責任という言葉では片づけられないことが多くあるのです。

 冒頭述べたとおり、今後、フリーランスという働き方が、増えています。

 労働法制の適用がない立場で働く人が増えることになると、何らかの保護の仕組みを作るべきか検討する時期が来ていると感じています。

 フリーランスという働き方を自ら望み働いているとしても、上記のような発注者との構造的な問題があります。

 フリーランスという働き方が今後増えるのであれば、その方が活き活きと働く社会をつくらないとよい社会にはなりません。

 発注者とフリーランスとの間の、この構造的な問題を是正する何らかの方策が必要であり、今、議論しなければならない時期に来ていると思っています。

 今年は、フリーランスという働き方の今後を考える上で、とても大事な一年になると思っています。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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