弁護士コラムバックナンバー

レーシック

木原 右

1 レーシックとは

レーシック(LASIK=”laser in situ keratomileusis”)は、角膜屈折矯正手術の1つであり昨今主流となっている手術である。

その手術方法の概要は以下のとおりである。

(1) マイクロケラトームというカンナのような機械あるいはレーザーにより角膜の表面を薄く削って蓋となる部分(フラップ)を作製する。

(2) フラップ下の角膜実質を、エキシマレーザーを照射することにより、削る。

(3) フラップを元の位置に戻す。

近視矯正レーシック手術は平成18年10月25日、遠視矯正レーシック手術は平成20年12月22日に正式に認可された手術である。レーシックは裸眼視力を向上させるという大きなメリットがある一方で、種々の合併症が生じる可能性もある。そのため、日本眼科学会によりレーシック手術のガイドラインが公表されている。現時点での最新のガイドラインは、平成21年7月10日付の「エキシマレーザー屈折矯正手術のガイドライン」である。

2 ガイドライン上の屈折矯正量の限度

上記ガイドラインにおいては、屈折矯正量について、原則を6D(ディオプター)までとしている(なお、何らかの医学的根拠を理由としてこの基準を超える場合には、十分なインフォームド・コンセントのもと、10Dまでの範囲で実施することとする、としている。)。

なお、ディオプターとは、近視・遠視・乱視の屈折異常の度合いを表す指標である。例として近視について大雑把に分類すれば、-6D未満が軽度から中等度の近視、-6〜-9Dが高度の近視、-10D以上が超高度の近視といった感じになる。もし、コンタクトレンズを使用していれば、その箱等にディオプターの表示がなされているはずであり、自らのディオプターについて簡単に確認することが可能である。

上記ガイドラインが屈折矯正量の限度を設けているのは、より強い近視では術後の矯正精度が落ちること、角膜の切除量が多くなるためハロー・グレアの度合いが酷くなるなど「物の見え方」の質の低下が起こりやすいことなどが理由である。

3 合併症

以下に、レーシックに伴う合併症をいくつか挙げる。

(1) ハロー・グレア

角膜実質の切除部分の縁では光が乱反射する。そして、夜間には瞳孔が散大する関係上、その縁における光の乱反射の影響が大きくなる。そのため、夜間に、光がにじんで見えたり(ハロー)、光がまぶしく見えたり(グレア)する症状が出ることがあり、夜間の自動車の運転に支障が出る場合もある。夜間運転が職業であるなどの場合には、レーシックを受けるかどうかは慎重に検討する必要がある。

(2) コントラスト感度の低下

レーシックにより、コントラスト感度(色の明暗、濃淡を識別する能力)に支障が出ることがある。

(3) ドライアイ

レーシックにおいては、フラップ作製の際に角膜知覚神経が切断・切除されることによって角膜知覚が低下し、反射性の涙液分泌の低下や瞬目の低下による涙液蒸発の増加を引き起こすためにドライアイ症状を来すと考えられている。

通常は、症状は一過性で、術後6か月程度で改善することが多い。しかし、中には、6か月を経過してもドライアイが遷延化するケースも見られる。そのような場合には、涙点プラグの挿入といった外科的手術や頻回の点眼などが必要となることもある。

(4) 過矯正

とくに近視矯正レーシック手術の場合に、角膜実質の削りすぎにより、目標視力を超えて遠視となる場合がある。レーシックにおける矯正量は、手術中の角膜の乾燥度などにも影響を受けるので、過矯正になったからといって、一概に手術ミスとは言い難い。

遠視になると、近法作業時に眼精疲労を生じることがある。そのため、とくに近方作業が多い場合には、そもそもの目標視力を低めに設定するなどといったことの検討の必要性も出てくる場合がある。

(5) 屈折の戻り(リグレッション)

レーシックを行っても、時間の経過により、屈折状態が戻ることがある。原因としては、角膜が平坦化したことにより角膜上皮が厚くなる、角膜後面が前方に突出するといったことが考えられているが、実際の原因は不明である。

4 おわりに

レーシックは、医学的に確立されている屈折矯正手術であり、私もその有用性を否定するつもりはない。しかし、レーシックは種々の合併症が生じうるものであることを十分理解した上で、手術を受けるどうかを検討すべきであろう。

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