弁護士コラムバックナンバー

IP Boost Japan とChatGPTの進化

弁護士法人ひかり総合法律事務所
代表社員 藤原宏高

 現在ChatGPTのバージョンは5.1となり、その中でも複数のアプリケーションを選択できるようになっています。

 私はDeep Researchを主に使っていますが、このDeep Research による「問いかけ」(以下「要求事項」といいます)を行うと、世界中の公開されているウェブデータの中から関連する情報を検索するだけではなく、その検索したデータを基に、こちらの要求事項に対して回答をしてくれます。

 要求事項を組み合わせて多くの情報を検索し、検索した情報を前提として、さらに要求事項を追加することによって、莫大な情報の中から、AIに基づく合理的な推論として一つの回答を得ることができます。

 私が弁理士の上村輝之先生らと2年前から立ち上げたIP Boost Japanでは、現在、新たなビジネス領域の開拓に取り組んでおります。

 新しい特許技術をもとに新たなビジネス領域を開拓する場合、果たしてそのような市場が今後確立できるのか、特許ライセンスを得て新しい市場に新規算入した事業者は、きちんと売り上げを立てることができるのか、様々な克服すべき課題を乗り越える必要があります。

 このような将来予測についてのAI技術の進化には、驚かざるを得ません。

 調査のアルゴリズムはIP Boost Japan側で設計しますが、一例を揚げると、現在取り組んでいる事案では、AIで、

  • 新しい特許技術(以下「当該特許技術」といいます)と同分野の技術を用いた参考となる類似の市場(以下「参考市場」といいます)をまず調査し、
  • 参考市場と当該特許技術を用いた新しい市場(以下「新規市場」といいます)とを相互に比較し、
  • 当該特許技術がどのくらい新規市場を獲得できるのか、

 を推論してもらいます。

 当然、AIとしては楽観的に予測した場合、悲観的に予測した場合など、複数の予測を行いますが、その過程で、考慮すべき重要な要因を抽出してくれます。

 特許技術を多くの人たちに普及して使っていただくためには、単に特許をライセンスするだけでなく、ライセンスの条件を詳細に検討する必要がありますが、その際、新規市場拡大のための考慮すべき重要な要因を踏まえたビジネスモデルを前提としたライセンスの条件を定めることが最も効果的と考えられます。

 これまでの法律家の常識としては、ライセンスの条件は依頼者が決める、そして法律家はその条件に従って契約書を作る、という業務が主でした。

 しかしながら、上記のような新規特許技術の市場拡大のためには、新規特許技術を理解した上で、AI技術を駆使し、弁護士や弁理士もビジネスモデルの構築に協力することが重要となってきております。

 IP Boost Japanがこれまでの2年間で確立した成果の中で、最も大きなポイントは、AI技術を駆使して新たなビジネスモデルを開拓すると言うことです。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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