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詐欺被害を考える

小林 弘卓

 世の中に詐欺の被害は絶えることがない。

 私もこれまで、投資詐欺・結婚詐欺・借入金詐欺・取込み詐欺・裏口入学詐欺などなど数多くの詐欺案件に取り組んできた。

 しかし、騙し取られたお金を取り戻すことは容易ではなく相当な労力を強いられる。

 また、詐欺罪として刑事責任を追及したくても捜査機関はなかなか被害届を受理しないのが実情である。

 捜査機関としては、詐欺の捜査は相当難しい。

 例えば、単なる無銭飲食にしてもお金を持たずに飲食しただけでは詐欺と決めつけることはできない。

 人からお金を借りられるとか飲食代を調達する手段が皆無であったことをも捜査しなければならない。

 ましてや少しでも手の込んだ詐欺ともなればたくさんの弁解が予想されるからこれらを一つ一つ潰す捜査が要求される。

 ところが、被害者が相手と和解すれば被害届を取り下げられることはままあって、捜査機関にしてみればいわば梯子を外されることになる。

 そんなこともあるものだから、捜査機関は、予想される相手の弁解を潰すための裏付け資料を求めてきてなかなか被害届を受理しないのである。

 この点については、平成31年3月25日付警察庁刑事局長から、各都道府県警察の長などに対し、「迅速・確実な被害の届出の受理について」として、「被害の届出に対しては、被害者・国民の立場に立って対応し、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、即時受理すること」としている。

 だから、被害届は受理されるのが原則であるとの認識のもと行動すべきなのである。

 ただし、受理されたからと言って、捜査がすぐにされるとは限らない。

 ましてや詐欺師の身柄を拘束するまでには相当の期間がかかる。

 だから、被害届を受理された後は何もしないのではなく、捜査機関に対し、進捗具合をことあるごとに確認することが肝要である。

もっとも、大抵の場合被害者としては、刑事責任を追及するよりは被害金を取り戻すことに強い関心を持っている。

 そこで、先ずは詐欺師と交渉することとなる。

 通常詐欺師は詐欺ではないとしていろいろ弁解をしてくる。

 しかし、本当に詐欺をしていないのであれば、自らを正当化する証拠を積極的に提出してくるものである。

 このような態度にでない限り詐欺と考えて先ず間違いない。

 そこで、こちらとしては、弁解を尽くさせたうえで、今後の刑事責任の追及や民事訴訟を見据えて、ありとあらゆる手を尽くして詐欺であることの裏付け証拠を収集することが必要である。

 そして、詐欺であることの証拠をちらつかせながら交渉すれば、返済の優先順位を上げさせるのに大いに役に立つ。

 また、交渉で難しい場合には、早い段階で詐欺を理由に民事訴訟を起こすべきである。

 この場合、大切なのは詐欺を理由として法律原因を構成すること。

 往々にして詐欺師は、例えば、投資をうたっていても交付書面は金銭消費貸借としたり預り金としたりする。

 しかし、安易にこれら書面にひきずられてはならない。

 詐欺の実態を見極めて法律構成を検討することが必要である。

 また、裁判では、詐欺を直接立証する証拠は被害者の供述以外ほとんど存在しない。

 むしろ、詐欺を否定するような書面を作られてしまっていることさえある。

 しかも、裁判所は直接証拠を重視し、間接証拠による立証はかなりハードルが高い。

 そこで、できる限りの間接証拠を収集し、それぞれの繋がりを明らかにして明確な立証構造を構築し立証を万全なものとして、裁判所を説得する努力が求められる。

 裁判では、相手が長期分割などの和解を求めてくることもあるが、これを受け入れるかどうかもケースバイケースである。

 一般には短期のしかも一時金や物的・人的担保を要求するなどすべきである。

 詐欺師はいつ破綻するかわからない。

 安易に和解することなく判決を得ることも大事である。

 判決を得たら、執行を検討し、その後は、財産開示制度の利用(刑事罰もある)、破産の申立(破産開始決定前に和解することもある)などあらゆる手段を検討しなければならない。

 「悪い奴ほどよく眠る」と言うが、詐欺師は絶対に許さない、という強い気持ちで対峙することが一番大事である。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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