相手方(被告)の住所が不明の場合の訴訟対応(住所の調査方法)【 Part 2 】
1.前回のコラムの内容
前回のコラム「相手方(被告)の住所が不明の場合の訴訟対応(住所の調査方法)」において,住所の調査方法の事例をいくつかあげましたが,前回のコラムで書き切れなかった手法について,紹介致します。
2.銀行の口座番号からの調査
相手方(被告)の口座番号が判明している場合には,銀行に対して,調査をかけることで,氏名・住所が判明することがあります。
調査の方法としては,①弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会や,②既に訴訟を提起済みであれば裁判所を通じた調査嘱託の方法を取ることも考えられます。
いずれも,強制力はありませんが,銀行が応じるケースは多くあります。
なお,②の調査嘱託に関しては,氏名不詳者を対象として訴訟を提起することとなりますが,氏名不詳者を対象とした訴訟提起を適法とした高裁の裁判例があります。(名古屋高等裁判所金沢支部・平成16年12月28日決定)。
銀行口座のみ判明している場合というのは,詐欺被害の類型に多く見られますが,ヤミ金のような被害事例については,振り込め詐欺被害者救済法に基づき,口座凍結を事前におこなうケースもあります。
3.ビットコイン等の暗号資産(仮想通貨)の送金先からの追跡
送金をビットコイン等の暗号資産(仮想通貨)で行った場合に,相手方(被告)の送金先アドレスから,相手方の氏名・住所を調査することが可能なケースもありえます。
ビットコイン等の暗号資産(仮想通貨)の場合,送金先アドレスから,交換所の調査が可能なケースも理論上ありえるもので,交換所が判明した場合には,交換所に対して弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会をすることで,住所・氏名が判明しうる場合もありえますが,実務上の運用が少なく,今後の事案の集積が待たれるところです。
4.メールアドレスやSMSのDM等からの調査
相手方(被告)のメールアドレスや,SMSのDM等のみしか判明していない場合には,上記と同様に,①弁護士会照会や,②調査嘱託の手続が考えられますが,いずれも,法的強制力がなく,開示がなされないことが通常です(なお,プロバイダ責任制限法の対象外ですので発信者情報開示の手続は取れません)。
この場合,③証拠保全手続を取り,検証物提示命令の発令を受けることで,法的な拘束力のある命令の発令を受けて,相手方の特定が出来る場合 があると考えられておりましたが,電気通信事業者に対する証拠保全は,通信の秘密を理由として,開示が認められないことが,近時の最高裁で明らかにされました。
この点については,電気通信事業者の自主的な取り組みや,なんらかの法制度的な手当が望まれるところです。
5.捜査機関による調査
相手方(被告)の行為が,刑法上,違法と評価できる場合には,警察や検察などの捜査機関に対して,被害届等を提出することにより,捜査機関による捜査によって,相手方(被告)の特定を期待できる場合があります。
捜査機関は,捜査関係事項照会や,捜索・差押といった強力な捜査権限を有するものですから,民間である弁護士に比して圧倒的な調査能力を有しています。
しかしながら,特に,詐欺や横領などのような財産犯については,被害相談に際して,被害者側で相当程度資料をまとめ証拠関係を整理する必要があるところ,被害状況を整理して捜査機関に被害届を提出することは容易ではなく,捜査権の発動を促すことが困難なことが多くあります。
このような場合,被害相談に先立ち,弁護士が資料整理を行ない,弁護士が被害相談に同行することで,被害状況の伝達を円滑にすることができます。
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以上
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