弁護士コラムバックナンバー

ペニーオークション

高木 篤夫

 ペニーオークションと芸能人の問題が一時報道された。

 この件に関して若干の取材を受けたりもしたので、今回はペニーオークションについて言及したい。

 今年の2月にも「口コミサイトとステルスマーケティング」というタイトルで本コラム欄でステルスマーケティングについて述べてみたので、ステルスマーケティング自体についてはそちらもお読みいただければと思う。

 今回は、いわゆるステルスマーケティングの手法を用いて芸能人が、報酬をもらって自らは実際にはペニーオークションを利用していないのに、自分がペニーオークションで低価格で落札したかのように自分のブログで書いていたということが問題となった。

 それなりに名前の売れている芸能人が、報酬を得て商品やサービスを広告・宣伝をすることは、著名人が特定の商品・サービスを宣伝することによる注目度のアップだけでなく、「あの人のイメージにあっている商品なら、私も使ってみようか」「私の好きなあの人が宣伝しているなら、買ってみようか」「あの人が宣伝しているなら、きっとよいものだろう(悪いものではないはずだ)」「あの人が宣伝しているなら、有名人だし,宣伝文句に嘘はないんじゃないか」など、商品イメージを高めたり、商品・サービスの購買意欲を刺激したり、信用力を増したりすることは、一般的に認められるものだと思う。だからこそ、有名人を広告などに起用する。

 広告などに著名人を起用することは、それを見た(読んだ)一般人にとってそれは広告・宣伝の一環であることが容易に認識できるので、広告で知名度を利用していてある程度割り引いて考えることができる。たとえば、有名人が広告に出ている自動車だからといって、その有名人がその車を愛車として常用しているとは誰も思わないだろう。

 しかし、広告でなく、ブログなどで自らがペニーオークションに参加して商品を安価に落札したというように書けば、ブログの記載内容が、本人の私的生活の一部としての体験として読まれる可能性は高い。ペニーオークションの宣伝として認識することなく、ペニーオークションを利用すれば本当に安く商品を手に入れられるのかということを信用してしまう人も出てくる。

 こうした欺瞞的な宣伝を今回詐欺で摘発されたペニーオークション事業者が利用したということである。

 ペニーオークション自体は、2年ほど前に問題となったが、ペニーオークション事業者自体が普通に営業してもそれほど儲かるものではないし、その仕組みの射幸性・欺瞞性などが指摘され、ペニーオークションサイトも減少しつつあったといわれる。

 今回の事件の摘発は、他の事件を警察が検挙して捜査していたところ、たまたまペニーオークション関係の資料が見つかり、事業者がペニーオークションシステムの操作によって落札できないような仕組みにしていたことが判明したからであった。

 インターネット上での詐欺的な被害というと、出会い系サイトを使ったサクラサイト、ペニーオークションでのサクラなどが考えられるが、サクラの利用については、外部からはサクラの存在を明らかにすることが困難なことが多い。今回の詐欺事件で、ペニーオークションはこうしたサクラの介在がありうるシステムであることが明らかになったことの意義は大きい。

 消費者支援機構関西では、サクラサイトの落札情報をもとにコスト的にサクラが介在していないと収益をあげられないという分析を試みたりしているので、参照してみていただきたい

 マスコミでは芸能関係の話題としても取り上げられたので、このブログで架空の落札話を書いた芸能人の責任はどうかということが話題となった。

 本件は、ペニーオークション事業者が詐欺罪で検挙されたものであり、ブログで架空の落札話を書いた芸能人は、この詐欺の幇助になるのではないかということを指摘する一般の方々の意見も散見されたようである。しかしながら,幇助犯が成立するには、幇助の故意が必要である。今回の事件でいえば、ブログに偽落札話を書き込んだ芸能人が、「問題となったペニーオークションで詐欺が行われていると知りながら」嘘の落札話をブログに書かなければならない。報道によれば、これらの芸能人は,ペニーオークションで実際には落札していないにもかかわらず、ペニーオークションで落札して商品を得たという虚偽の事実を書いて報酬をもらっていたというだけであって、そのペニーオークションサイトで詐欺(サクラの介在)が行われていたことは知らなかった可能性は高い。そうなると、少なくとも刑事上の責任を問われることはない。もちろん、嘘を事実であるかのように書いたことによる社会的責任はあるであろうし、これらのブログの記載を信じてペニーオークションに参加した人に対する民事上の過失の不法行為責任を問われる可能性はある(ただし,損害との因果関係が証明できるかは問題ではある。)。

 世の中にはうまい話はまずないと思ったほうがいい。極端に安価に商品を入手できる取引ということは、誰かがどこかでコスト負担をしているはずである。消費者は十分そのことを認識してほしいし、芸能人も自らの社会的な影響力を利用してお金を得るということの責任をもっと自覚してほしいものである。

以上

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