弁護士コラムバックナンバー

アカウントハックとリアルマネートレード

木原 右

1 はじめに

 ソニーのネットワークにハッカーが侵入するという事件が起きた。今回の事件は、ソニーという大会社がハッキングされ、また、流出したおそれのある情報も大量であるためニュースとして報道されたが、実際にはニュースにはならないたくさんのハッキング事件が起こっているようである。

 その手口は、あくまで推測であるが、ホームページやメールに仕込んだウィルスを使って他人のPC感染させるなど、セキュリティ対策が必ずしも万全ではない人のPCから情報を盗み出すというもののようである。

 盗まれる情報も、クレジットカード情報などもあるかもしれないが、最近よく耳にするのは、ゲームに関するデータである。なんだ、たかがゲームデータか、と思われる向きもあるだろう。

2 アカウントハック

 昔からあるファミコンなどに代表されるような一人でやるゲームのほかに、インターネットを使うことが当然となってきた昨今、ネットを介して不特定多数のプレイヤーが同一の世界に同時に接続し戦闘や売買等を行うゲームも多数あり、それなりの利用者数を誇っている。そのようなオンラインゲーム(厳密にいうと、多人数同時参加型オンラインRPG(MMORPG))の世界では、プレイヤーはお金を集めたり、より良いアイテムを手に入れたりすることを目的にゲームを楽しんでいる。

 そのオンラインゲームに接続するためのアカウントやパスワードを盗んで(アカウントハック)、プレイヤーが集めたお金やアイテムを奪うということが頻繁に起きているようなのである。

 もちろん、アカウントハックは、日本においても「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(以下、不正アクセス禁止法)で処罰されうる歴とした犯罪である。ただ、このような一個人に対するハッキング行為は、そこまで高度な技術は不要であること、ハッキング対象も一個人であり社会的影響も大きいものではないこと、などのために、大会社のサーバーに侵入することに比べれば、ハッキング行為を犯すことに対する抵抗感があまりないのかもしれない。さらには、盗む情報がゲームデータであるため、より一層、安易な気持ちでハッキング行為が行われるのかもしれない。

3 リアルマネートレード(RMT)

 いくら抵抗感があまりないとはいえ違法行為であるアカウントハックが頻繁に行われるのはなぜだろうか。

 ハッカーは、他のプレイヤーのお金やアイテムを自らオンラインゲームの世界で使うために奪うわけではなさそうだ。そこには、リアルマネートレード(RMT)という問題が絡んでいる。

 RMTというのは、ネットゲーム上のお金を現実のお金で売買することである。ゲームバランスを崩すなどの理由で、RMTが禁止されているオンラインゲームがほとんどであるが、日本においてはRMTを明確に禁止する法律はないうえに、現実のお金を使って手っ取り早く強くなりたいという需要があるため、RMTは後を絶たない。RMTを公然と行っているホームページも多数ある。

 つまり、アカウントハックを犯す者は、他のプレイヤーのお金やアイテムを奪い、これらをRMTにより、現実のお金に換えていると考えられるのである。

 RMTは、先ほど述べたように日本においてはこれを明確に処罰する法律はない。そして、オンラインゲーム世界のお金やアイテムは、データとはいえ個人の財産という側面もないわけではないため、これを売買することは自由に行われてもいいのではないかとの意見もあるだろう。

 しかし、大半のオンラインゲームにおいてはRMTは規約違反とされていること、そして、アカウントハックを惹起させる大きな要因になっていることをも考えると、なんらかの法律的対処を考えてもいいかもしれない。

4 最後に

 たかがマイナーなゲームの世界に大げさな話だと思う人もいるかもしれない。しかし、オンラインゲームの市場規模は1兆円ともいわれている。

 もともと日本は任天堂やソニーに代表されるようにゲームの分野では世界の最先端を行く国である。しかし、ことオンラインゲームにおいては、現状、日本は韓国に大きく後れを取っている。その韓国では、国策としてオンラインゲームを推進し、RMTも法律で禁止しているとのことであり、いずれにせよ、積極的にゲーム産業を推進している方向性が感じられる。

 RMTを法律で禁止するかどうかはともかく、日本においても、ゲーム産業の育成についてもっと真剣に考えてもいいかもしれない。

以上     

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