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反社会的勢力排除の取り組みについて

石田 英治

 みずほ銀行がグループのオリエントコーポレーションを通じた提携ローンで暴力団員に融資をしていた問題が報道されて以来、各企業は既存の取引先の反社チェックに腐心しているようである。

 充実したデータベースのある企業ないし業界であれば、データベースを利用してふるい分けをすることができるが、データベースを有していない企業が、数多くの取引先を1つ1つチェックするのは、そのノウハウがなければ困難であるし、作業量も膨大となり、極めて悩ましいところである。

 最も信頼できる暴力団情報を保有しているのは警察であるが、警察が暴力団情報を提供する基準については、通達に定めがあり暴力団排除等のための部外への情報提供について、簡単に応じてくれるわけではない。参考までに確認しておきたいというだけでは、提供には応じてくれず、暴力団と分かれば、直ちに取引を解消するということでなければ、情報提供には応じてくれない。

 この点は、暴力団排除の専門機関である都道府県暴力追放運動推進センターでも同様である。公益財団法人暴力団追放運動推進都民センターでは、情報提供後概ね1ヶ月程度で取引を解消することを求めており(1ヶ月を期限とするのは将来対象者が暴力団を離脱する可能性を考慮したもの)、数千件、数百件の取引先を1ヶ月以内に一斉に取引解消することは事実上不可能であることから、「1ヶ月くらいを目処に処理できる件数」という観点から1回当たりの相談での照会件数を5件程度に絞っている。また、「公助」に頼る前に「自助」を求めており、特段の疑いのない取引先を含め数多くの取引先を一括でチェックして欲しいと申し入れても応じてはくれない。自助努力により「反社会的勢力である疑いが濃い」データを抽出した上で、照会する必要がある。

 みずほ銀行の例を見ても明らかなように、昨今、反社会的勢力との取引関係は企業のレピュテーションに死活的な影響を及ぼしかねないリスクである。また、事案によっては、役員や担当者が責任を負うことも考え得る。しかし、企業には、反社問題以外にも対応しなければならない課題は数多くあり、この問題にのみ経営資源を集中させるわけにはいかないとの声も聞く。おそらく、大手企業の中でも、現時点で反社対応を完璧に完成させているわけではないところも、相当数あると思われる。

 反社問題に関しては、社内に専門家がいない企業の方が多いと思われ、弁護士を含めた外部専門機関を適切に活用するのが望ましいと言われている。今日、明日のうちに、全ての取引を精査し、完全に反社会的勢力との関係を解消するのは不可能としても、速やかな取引解消を目指し、適切に対応はしていたと言えるようにはしておきたい。みずほ銀行の問題も、将来の取引解消に向けた取り組みがしっかりなされていれば、これほどの問題にはならなかったはずである。

以上

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