弁護士コラムバックナンバー

DMCAサピーナの勧め

弁護士法人ひかり総合法律事務所
代表社員 藤原宏高

第1 DMCAとノーティス・アンド・テイクダウン

 DMCAとは、1998年10月に米国で成立したデジタルミレニアム著作権法(The Digital Millennium Copyright Act)のことで、米国著作権法の一部である。

 DMCAでは、インターネットサービスプロバイダ(ISP)を保護するため、「著作権の侵害を主張する者から法定の形式的要件を満たす通知を受領したプロバイダ等は、著作権侵害情報か否かの実体的判断を経ずに、いったん当該著作権侵害とされる情報を削除すれば、責任を負わない」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000105846.pdf から引用)ための手続きである、ノーティス・アンド・テイクダウン(Notice-and-Takedown)を導入した(米国著作権法第512条)。

第2 DMCAサピーナの請求

 これに加えて導入されたのが、同条(h)に規定するDMCAサピーナの手続きである。

 通常の手続きによって、サービスプロバイダに対して、匿名の人物を特定するための召喚状(subpoena)を提出するには、侵害者不詳のまま訴訟を提起する必要があったところ、DMCAサピーナに基づけば、米国での訴訟の提起は不要となった。

 著作権の侵害を主張する者から法定の形式的要件を満たす通知をプロバイダ等に送付することが要件となっているので、この要件を遵守しないと、DMCAサピーナは請求できない。

 ところが、上記の通知を出すと、通常、プロバイダ等は情報を削除してしまう。

 そのため、DMCAサピーナを請求するための証拠(通知書のコピー、権利侵害サイトのURLなど)を事前に収集しておき、通知書の送付によって侵害情報を削除されても、困らないための準備が必要になる。

 プロバイダによっては、法定の形式的要件を満たす削除請求フォームをあらかじめ用意しているサイトもあるが、DMCAサピーナを請求する予定がある場合は、安易に削除請求フォームで削除請求せず、権利侵害サイトのURLを保存するなどの証拠の収集を弁護士に依頼する必要がある。

 削除請求フォームから削除請求すると、削除請求したことの証拠すら残らないケースもあるからである。

第3 開示される侵害者情報

 DMCAサピーナで開示される情報は、登録されている場合は、名前、Eメールアドレス、電話番号、住所、アカウント登録時及び侵害作品アップロード時のIPアドレスである。

 わずか2ヶ月程度で、訴訟を提起することなく侵害者情報が入手できることから、日本のプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求と比べて、圧倒的に使い易い制度であると言わざるを得ない。

 日本の証拠開示手続きが劣っていることを証明するものである。

 ただし、DMCAサピーナは、プロバイダ等の住所を管轄する州裁判所に対して請求することから、当該州で弁護士資格を有する米国弁護士の協力が不可欠となるが、米国の弁護士はネットワークを持っているので、心配はない。

 DMCAサピーナの請求により、プロバイダ等から侵害者情報の開示を受けた場合、氏名及び住所まで判明すれば、日本で損害賠償請求訴訟を提起することが可能となるが、氏名が開示されない場合は、IPアドレスから、当該プロバイダに対して、発信者情報の開示請求を行うことになる。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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