国際ロマンス詐欺について
1.被害の状況について
インターネット上の詐欺被害は、従前から後をたたないところですが、特に、近時の被害で多くみられるのが、いわゆる「国際ロマンス詐欺」などと称される詐欺事案です。
今年の2月には、東京の三弁護士会共催で、「詐欺的消費者被害の現状と対策 ~最近の被害の傾向と『国際ロマンス詐欺』事件の対処法~」と題して、研修が行われました。
私は、研修で講師を務めさせていただきましたが、研修以降も、被害は減っておらず、被害は拡大する傾向にあります。
2.公的機関からの注意喚起について
このような被害が拡大する状況を受けて、公的な機関からも、各種の注意喚起がなされているところです。
具体的な被害類型として、次のようなものが紹介されています。
(1)消費者庁、金融庁、警察庁からの注意喚起
消費者庁、金融庁、警察庁の合同の注意喚起(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_001/)においては、以下のような被害類型が紹介されています。
「出会い系サイトやマッチングアプリ等で知り合った人に勧められて、暗号資産の投資を進めたが、その後返金されない・出金できない、連絡がとれない等とトラブルになっているケース。マッチングアプリで知り合った女性から、海外取引所で暗号資産を購入。詐欺だったのでお金を取り戻したい。(20 代 男性)」
(2)国民生活センターの注意喚起
国民生活センターにおいても、次のような被害類型が紹介されています(https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210218_1.html)。
「紹介者から暗号資産が振り込まれたが、手数料を支払っても出金できない。マッチングアプリで知り合った女性だと言う人物から、暗号資産(仮想通貨)の売買で資産を増やせると誘われ、海外の取引サイトに登録し口座を開設した。女性から私の口座に暗号資産が振り込まれ、預かってほしいと言われた。暗号資産の引き出し等を行うには、約75万円の暗号資産を支払う必要があるが、のちに返金すると言われたので、送金したところ、サイトから、受領のメールと72時間以内に返金するとの通知が届いたが、返金されない。(2020年10月受付 30歳代 男性)」
3.典型的な手口
ほとんどのケースが以下のようなパターンで、被害にあっていますので、ぜひご注意ください。
マッチングアプリ での勧誘 |
マッチングアプリでの勧誘は
大手アプリから中小まで多岐にわたります。
↓
LINEでの やりとり |
やり取りする相手は、機械翻訳を使った
外国人であることが明らかなケースも多々あります。
↓
海外投資サイト (FX、暗号資産)への勧誘 |
海外投資サイトの多くは、FX・暗号資産投資です。
実態があるものはほとんどありません。
サイト上では残高が増えて見えるが引き出せないことがほとんどです。
また、引き出しに税金が掛かると言われ追加請求されるのも典型です。
撒き餌として、当初は一部回収できる場合もあります。
↓
加害者への支払 ・銀行振込 ・暗号資産送金 |
銀行送金は従前からありますが、暗号資産の場合の
追跡の困難性が一つの特徴です。
4.問題点
(1)事件件数、被害が甚大であること
国際ロマンス詐欺といわれるものの被害についての問題点は、まずひとつとしては、件数が非常に多いと言うことがあげられます。
各地の弁護士会等で、昨年に相談110番が行われておりますが、その他の各団体などの被害報告などからすれば、年間何百億円という規模があってもおかしくはないと思われます。
(2)被害回復の困難性
さらに、大きな問題は、被害回復が困難、すなわち、加害者の特定が困難であることがあげられます。
被害の端緒となる、マッチングアプリにおいては、国際ロマンス詐欺の加害者情報を、会員情報として有しているはずですが、入会の際の身元確認が適切に行われていないことが多くあります。
また、詐欺に利用されるLINEは、加害者の情報開示に非協力的です。
さらに、決済手段の暗号資産(仮想通貨)は、身元の追跡が非常に困難です。
そして、加害者の情報をある程度追跡しても、完全に海外からの犯行である場合などは、国内からの被害回復が非常に困難になります。
したがって、被害予防のために、海外からのマッチングアプリへの登録については、マッチングアプリ業者の側で、身元確認を厳重にするなど、被害を予防するようにしないと、いつまで経っても、マッチングアプリでは詐欺がはびこり続けることになってしまいかねません。
私も所属する、東京投資被害弁護士研究会では、「ロマンス詐欺に関する申入れ」として、マッチングアプリ業者や、LINE社に対して、申入れをしていますが、必ずしも被害は減っているとは思えません。
(参考:https://tokyosakimonosyokenhigai.com/topics/20210802_1.pdf
https://tokyosakimonosyokenhigai.com/topics/20210802_2.pdf)
5.展望など
被害回復が、困難であるというのがまず、大前提としてありますが、暗号資産(仮想通貨)は、ブロックチェーンであることから、送金先が、どこであるのかは、追跡することが可能です。
しかしながら、送金先が分かっても、それを管理する具体的個人の情報への紐付けは容易ではありません。
まず、送金先の暗号資産交換所を解析し、さらに、そこから、暗号資産交換所に問い合わせをするのですが、暗号資産交換所が、海外に存在する場合には、問い合わせに協力をしないケースも多々あります。
被害回復のための、研究が、日々続いていますが、被害に遭った場合、最も注意して頂きたいのが、さらなる被害に遭わないこと、ということです。
被害回復が、容易に可能であるかのごとく喧伝して、さらなる、被害者から、被害回復のためとか、調査費用等と称して、多額の金銭請求する被害は、国際ロマンス詐欺に限らず、多く見られる被害です。
これを、二次被害といいますが、被害に遭った方は、二次被害には、是非とも、お気を付け頂く必要があります。
以上
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