弁護士コラムバックナンバー

反社会的企業のホワイト化(その2)

石田 英治

 2017年9月のコラムで「反社会的企業のホワイト化」について書かせていただきました。

 改めて説明すると、これは、反社会的勢力ないしその関係者と認定され、取引から排除されている企業を浄化し、社会から健全な企業と認めてもらうプロセスのことをいいます。

 その後、そのコラムを見たという複数の方から相談を受け、何件かは実際に受任もしましたが、正直に申し上げると、実情は厳しいというのが実感です。

 特に厳しいのは金融機関です。当然と言えば当然であり、金融機関は反社会的勢力の被害を受けやすいことに加え、金融機関がここを緩めると、これまで社会全体で取り組んできた暴力団排除活動が骨抜きになるおそれもあり、やむを得ない面はあります。

 しかし、一方で、更生しようと努力している人に対して再チャレンジを認めることも必要であることは否定できないと思います。

 要はバランスであり、どこにバランスを求めるかについて、これまで暴力団排除活動に積極的に関わってきた弁護士会の民暴委員会でも様々な調査研究あるいは取組がなされていますが、明確な解答を示すことが非常に難しく、苦労しています。

 バランスを考える上で中心的な要素になるのは、信用の回復という点だと思います。言い古された表現になりますが、信用を失うのは一瞬であり、信用を築くには長期間の努力が必要になります。

 即効的な解決を求めるのであれば、自らの信用を欠く以上、他人の信用によって補完するしかありません。

 具体的には、社長を交代したり、会社や事業を信用のある別の企業に売り渡したりする等です。

 しかし、私のところに相談に来られる方はオーナー企業が多く、彼らにとってそれらは解決方法になりません。そうであれば、相応の時間をかけて自らの信用を築き直すしかありません。

 そのための努力としては、

 ① 反社会的勢力との関係遮断を明確に目に見える形で行う

 ② 社内の体制を改善する

 ③ 社会に貢献し、暴力団排除活動等の公益活動にも積極的に取り組む

 ④ これらの活動について定期的に金融機関に報告し、金融機関のモニタリングに服する

 等が考えられます。

 また、要する時間も数か月という単位ではなく、数年はかかることが想定されます。そして、これらの努力が必ず結実するとは限りません。

 しかし、何もしなければ、前進もありえません。

 相談者の方には、「確実な成果を約束することはできないが、疑う人に対して『やるべきことはやっている』と堂々と説明できるようにしておくことと、『できることはした』という納得感をもって満足してもらうしかない」と説明するようにしています。

具体的な弁護士の関わりとしては以下のものが考えられると思います。

 ①反社会的勢力に対して内容証明郵便により関係遮断を通知する。また、場合によっては、馴れ合いを疑われないよう面談・電話等でも毅然とした関係遮断の意思を示し、そのやり取りを録音する。録音内容は反訳し、内容証明郵便と併せて金融機関等に送付し報告する。

 ②弁護士を中心とした調査委員会によって、これまでの経緯等を調査するとともに、今後の社内体制の改善について検討する。民暴を専門とする弁護士を顧問にして、常に相談できるようにする。

 ③警察や暴力団追放運動推進センターへの相談に同席し、必要に応じて説明・助言をする。また、相談内容について記録化し、必要があれば実際に相談をしたことについて証人にもなる。

 ④金融機関への面談・報告に同席する。弁護士名の報告書を作成する。

 繰り返しになりますが、以上の対応が徒労に終わることも十分想定されます。

 弁護士に依頼をしたからといって、簡単に信用を回復することはできません。基本的には本人の更生の努力が重要です。弁護士ができるのはそのサポートです。

 ホワイト化を目指す企業には、その点を十分に理解して取り組んでいただく必要があります。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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