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個人破産手続の概要

綱藤 明

 平成29年1月10日,最高裁の統計(速報値)により,平成28年の個人の自己破産申請が,前年比1.2%増の6万4637件となり,13年ぶりに増加したことが報告されました。

「破産」という言葉自体には馴染みがあるという方でも,実際の個人破産手続がどのように行われているかまで知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。そこで今回は,個人破産手続の概要をご紹介したいと思います。

まず,個人破産手続を裁判所に申立てると,申立日,または申立日の翌日から起算して3日以内に,申立内容について裁判官と面接が行われます。これを「即日面接」といいます。この面接を経て,申立てた破産手続がいかなる手続により進んでいくのかが決定されることになります。

即日面接を経て決定される個人破産手続は,大きく分けて,「管財手続」と「同時廃止」があります。

まず,「管財手続」とは,裁判所から破産管財人が選任され,破産管財人が破産者の財産を換価するなどして,債権者に配当するための原資を確保する手続を指します。

即日面接の結果,管財手続となった場合,面接日の翌週の水曜日午後5時に破産手続開始決定がなされる運用となっています。なお,面接日から1週間以内を目安に,破産管財人との面談が行われます。

その後,破産管財人が破産者の財産を調査し,その結果を債権者集会で報告することとなります。この時点で換価業務が終了し,破産手続の費用を支弁するに不足すると認められる場合は,破産手続が廃止されます。なお,「破産手続の費用をも支弁するに不足すると認められる場合」とは,破産管財人報酬等の予納金を含む破産手続費用が支払えない場合をいいます。他方で,換価業務が終了し,債権者に対する配当ができるだけの財産が集まった場合は,当該財産を債権者に配当したうえで,破産手続が終結します。換価業務が終了していなければ,債権者集会はさらに別期日が設定され,続行します。

次に,「同時廃止」とは,破産財団をもって破産手続の費用をも支弁するに不足すると認められる場合に,破産手続開始の決定と同時に破産手続の廃止を決定する手続を指します。ここで,「破産財団」とは,破産手続開始決定時に破産者が有していた差押可能な財産をいいます。

即日面接の結果,同時廃止となった場合,面接日の午後5時に破産手続開始決定がなされると同時に,破産手続廃止決定がなされます。

これらの手続で共通するものとして,破産手続廃止後または終結後,裁判所によって,免責許可の決定の可否が判断されます。「免責」とは,破産手続において弁済されなかった破産者の債務について,破産終結後その責任を免除することを指します。つまり,破産手続開始決定がなされた段階で,債務が全てなくなるのではなく,免責決定を受けることによって初めて,破産者の債務(公租公課などの一部を除く。)が免除される仕組みになっています。

免責決定は誰でも受けられるものではなく,破産法所定の免責不許可事由に該当しないことが必要です。

以上が個人破産手続の概略となります。なお,上記の内容は東京地方裁判所の運用を前提にしたものとなります。

自分が破産しようとした場合,どのような破産手続が採用される可能性が高いか,その場合の費用はいくらか,免責不許可事由に該当するか,などのご相談につきましては,弁護士等の専門家に相談されることをお勧めいたします。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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