弁護士コラムバックナンバー

公益法人制度の現在

弁護士法人ひかり総合法律事務所
弁護士 藤原宏高
ひかり総合法律事務所
弁護士 吉原祐介

1 改革後の公益法人制度の運用状況 

 平成20年12月に公益法人制度が抜本的に改革されてから,約12年が経過した。 

 「公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議」が公表している「公益法人を巡る近年の状況について」という資料によれば,公益法人の数は,当初は増えなかったものの,平成23年に2273,平成24年に5700,平成25年に8628と順調に数を伸ばしていた。

 しかし,平成26年からは,9300から9600程度にしか伸びておらず,伸び悩んでいる。 

 その背景には,公益認定を取得できたとしても,公益事業を行うだけの経済的基盤,ノウハウ,人員等が不十分であるために,公益法人を維持できなくなった団体が多数あったという問題があるように思われる。

 また,上記の状況を踏まえて,内閣が,公益認定の申請に際し,公益事業を継続して行うことができるだけの経済的基盤,ノウハウ,人員等が備わっているかを以前より厳しくチェックするようになったことから,公益認定を取得することが難しいというイメージが世間に広まっていることも,公益法人の数が伸び悩んでいる要因ではないかと考えられる。 

2 公益法人として活動することのメリット 

 公益法人として活動することの本当のメリットは,収益事業の収益から,公益事業に支出することで,収益事業としての損金算入が可能となり,収益事業の課税を免れることができる点,及び結果的には,公益事業の事業規模を拡大できる点にある。

 よって,公益事業のみを行い,公益事業についての法人税についての税制優遇等のみでは,本当のメリットは享受できない。 

 加えて,公益社団法人または公益財団法人の名称を使用することで,その趣旨に賛同する市民や企業から寄附金を集めること,専門家やボランティアの協力を得ること,企業や行政との連携を取ることが期待でき,より広く社会のための活動をすることができる点が挙げられる。 

 もっとも,公益法人として活動をし,税制の優遇等を受けるためには,公益事業と収益事業等の会計を明確に分け,どの事業でいくら経費を使ったか,その収支はどうだったのか等について細かく峻別して管理する必要があることに注意すべきである。

 そのためには,公益法人の会計に精通した税理士のアドバイスを受けることが肝要である。 

3 公益認定の手続 

 公益認定のための秘訣は,事業の整理にある。既存の事業を整理統合し,公益事業としていくつの事業になるのか,収益事業はどれか,公益目的(23事業)との関係から紐付けて整理することになる。 

 よく誤解されることがあるが,公益認定の手続は一発勝負ではない。

 公益認定の申請をした後,担当の審査官とのやり取りを通じて,申請書類の修正や補充を行っていくことになる。 

 また,公益認定申請を行う前に,事前の窓口相談を行うことも可能であり,内閣府公益認定等委員会もこれを推奨している。

 この事前相談は,何度でも行うことができる。 

 公益法人の申請窓口は内閣府であるが,最終的には,公益認定等委員会の審査を受けることになる。 

4 最後に 

 以上のとおり,公益認定を取得し,その後も公益法人として活動していくことは簡単なことではない。 

 しかしながら,弁護士や税理士が,申請前の段階で,公益認定取得を目指す団体のサポートに入り,どのような事業を公益目的事業として行っていくのか,また,会計処理をどのようにすべきか等の検討事項を協議し,下準備をしっかりと行うことができれば,決して高すぎるハードルではない。

 また,公益認定申請の準備にあたって重要なことは,公益認定申請を通すことだけではなく,その後の公益法人の運営をも見据えて準備を行うことである。 

 公益認定を取得し,公益法人という名称を使用して活動することは,上記のとおり大きなメリットがあるため,興味のある団体には,ぜひ積極的にチャレンジしていただきたいと考える。 

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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