文明社会の崩壊時、最も大切なものは何か?ー知的財産を武器として活用するための重要性ー | IP Boost Japan

文明社会の崩壊時、最も大切なものは何か?ー知的財産を武器として活用するための重要性ー

[投稿日] 2024.01.12[更新日]
上村輝之

執筆者:弁理士

上村輝之

(かみむら てるゆき)

文明社会が大災害に見舞われ、秩序が崩れた時、私たちが生き残るために求められるものは、何でしょうか?この問いに対する答えは、知的財産を武器として活用することの重要性を浮き彫りにします。この問いから知的財産権の価値とその活用について考察します。

1. 海外での視点: 日本人との価値観の違い

10年前、米国での出張中、海外の仲間たちとの雑談の中で、私は興味深い問いにぶつかりました。それは、「大災害時に最も大切なものは何か?」という問いです。

私の思考は、東日本大震災における日本人の行動に向けられました。その時の協力、団結、愛情、正義、道義に触発され、私は次のように考えました。「人々の協力、団結、愛情、正義、道義、それが無ければ人は生き残れない。」

おそらく、あなたも同様の感覚を共有することでしょう。家族、友人、愛情、優しさ、協力、忍耐、努力… これらの要素が生き残りに欠かせないものとされています。

しかし、同じ質問を海外の仲間たちに投げかけた際、彼らの答えは異なりました。アメリカ、ロシア、イスラエル、スロベニアからの男女がいましたが、彼らの多くは「武器が最も重要だ」と答えました。彼らにとって、武器は生存に必要なものであり、歴史を通じてその重要性が示されているというのです。

彼らの視点から見ると、知的財産権もまた、競争における戦略的な武器として位置づけられるべきだということです。

これらの対照的な意見を通じて、文化や価値観の違いが浮かび上がります。日本人には「和をもって貴しとする」精神が根付いており、これは私たちの誇りです。しかし、世界の他の地域では「武器」の重要性が強調され、国際競争において不可欠な要素とされています。

2. 知的財産と国の軍事力

なぜこの話を持ち出したかというと、この意識が知的財産権の世界にも影響を与えているからです。知的財産権は、企業にとって武器となる重要な要素です。企業は、競争相手を制するための手段として知的財産権を駆使する必要があります。

企業にとって、知的財産権の主要な役割は何でしょうか?それは、他者を制御する力、つまり「武器」を持つことです。知的財産権の法的枠組みを見れば、この考え方が明らかです。 企業は国家に例えることができ、知的財産はその国の軍事力に相当します。国際関係において、国と国の競争は主に軍事力の強さによって決まります。そのため、軍事戦略の要素が知的財産戦略の立案に大いに参考になります。

3. 軍事力の国際的重要性

国際的な舞台では、軍事力が国の地位と交渉力を決定づけることがよくあります。軍事大国は、国際交渉の場で強気な態度を示し、その国の利益を守ることができます。その一方、軍事力を持たない国は、交渉において制約を受け、国際的な孤立に陥ることがあります。

極端な例を挙げると、我が国の北西方近隣に産業力は低いものの、軍事力(特に核戦力)が強大な国が存在します。その国は150か国以上と国交を持っており、国際的な影響力を行使しています。

一方、我が国の南方近隣に存在する島嶼は、半導体産業で世界をリードしているにもかかわらず、西隣の軍事大国との関係が複雑であるがゆえに、国際的な孤立を経験しています。このような国際的な現実が、軍事力の重要性を示しています。

4. 知的財産戦略と軍事的戦略

同じ視点を知的財産に適用することは、軍事力と知的財産の機能的な共通性から理にかなっています。海外の人々は知的財産権を「武器」として認識し、競争に勝つために積極的に開発と活用に取り組んでいます。競争に勝つためには、「武器」が必要であることを認識し、経営者自身が真剣に知的財産戦略の立案と実施に関与することが当然ととらえています。

知的財産戦略を立案する際には、軍事戦略の原則を参考にし、戦術的な作戦を考案することが有用です。知的財産権を「武器」として活用するためには、競合他社に対する優位性を確立し、相手を土俵の外へ押し出す戦術が必要です。知的財産権を戦略的に管理し、競争相手に対して優越性を維持するためには、綿密な計画と実行が不可欠です。

軍事戦略の考え方を知的財産にどう応用するかについては、改めてコラムかビデオセミナーでご紹介したいと思います。

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