2019年11月

ハラスメント等について考える


三木 昌樹



 今年(2019年)5月29日に「労働施策総合推進法」の改正法が成立しました。パワーハラスメントの防止対策をとることを事業主の義務としたものですが、仮に防止対策を怠った時もこの改正法自体に罰則の定めはありません。とはいっても、従来からある民法(不法行為等)や労働法(安全配慮義務違反等)及び刑法(暴行・傷害罪、強要罪など)上の責任を問われることに変わりはありません。一方で改正法により使用者に対して防止対策の強化を求めていることから、間接的には加害者や使用者の法的責任を問いやすくしているともいえます。

 また、パワハラの1類型ともいえるセクシャルハラスメントに関しては、20年前の平成11年(1999年)には男女雇用均等法において、職場におけるセクシャルハラスメントの防止措置が事業主に義務付けられており、平成29年(2017年)1月からは男女雇用均等法、育児・介護休業法が改正され、新たに妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについても事業主に防止措置を講じることが義務付けられています。しかしながら、20年以上前に法改正により事業主に対してセクハラを防止するよう義務付けをし、さらに法律を改正して防止策を強化したにもかかわらず、都道府県労働局にはいまだに多くのセクハラの相談が寄せられているとのことです。

 ところで、働き方改革関連法が平成30年(2018年)6月に成立し、翌平成31年(2019年)4月から順次施行されています。私は、今回のパワハラ防止対策やセクハラ防止措置などは、この働き方改革の大きな流れの一環としてとらえてよいと思っております。すなわち、働き方改革の諸施策に加えて、これらのパワハラやセクハラの防止対策が効果を上げることにより、職場の環境を改善し、労働生産性を高める施策の一助にしようとの意図が見えます。

 勿論そのこと自体に何ら問題はありません。むしろ、遅すぎたくらいだと思います。今年(2019年)8月27日の朝日新聞の朝刊によると、『働き方改革の旗を振る厚生労働省で、セクハラ・パワハラ被害にあった職員が4割超おり、仕事が多いと感じている職員は6割を超える。』との記事がありました。そしてその記事の続きとして『20代~30代が中心の職員38人による「厚労省改革若手チーム」は4月に発足。職員約3800人にアンケート(有効回答1202人)を実施した。「パワハラやセクハラを受けたことがある」と答えた人は46%おり、うち54%が、「人事上の不利益等を考慮して相談せず」「部局の相談員に相談しづらい」などとした。人事異動などが「適切になされていると思わない」は37%で、内38%が「セクハラやパワハラを行っている幹部・職員が昇進を続けている。」を理由に挙げた。』とのことです。本来であれば、もっとも改革に関しての意識が強くあるべき職場においてすらこの有様です。一般の職場において、どのような惨状(?)であるかは容易に想像がつきます。法律で規制することも大事かもしれませんが、ともに働く者の意識が変わらない限り、このような状況がそう簡単に好転するとは思えません。

 ところで、そもそもなぜこのようなパワハラやセクハラが起きるのでしょうか?
 以下は全くの私見ですが、私は、学校や職場での「イジメ」の問題とも同根だと思います。「イジメ」に関してはいろいろな原因が考えられます。一概には言えませんが、いじめる側にある異質なものを排除するという感情や他人に対する優越感や支配力の誇示など、他人に対する配慮の欠如と自己中心的な考え方などが根本にあると思います。そのためには教育改革やそれぞれの家庭におけるしつけなどの子供の育て方などを通じて、人生観や価値観などをよりしっかりしたものにする必要があると思います。もっとも、私はいわゆる道徳教育の復活に賛成しているわけではありません。日本には、他人に対する「思いやり」や「忖度」、「おもてなし」など日本独特の良い慣習があります。
 こういった昔からある慣習に加えて、憲法第13条には個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重が明記されています。イジメやハラスメントはこの個人の尊重を侵害するものであり、今回のパワハラの防止対策はまさに憲法第13条の趣旨に沿ったものであり、今後さらに充実したものにしていく必要があると思います。

以上



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