2018年7月

マンション共用部分の瑕疵について


楠 慶



1 マンションの共用部分の欠陥について瑕疵担保責任が成立するか。

(1)問題の所在

 マンションの居室を購入したところ、その共用部分(例えば、バルコニー)に欠陥があった場合に、買主は、自ら、売主に対する責任の追及ができるでしょうか?

(2)否定説

 マンションの居室の売買が行われた場合に、共用部分の瑕疵について、買主自身が、売主に対して瑕疵担保責任を追及できるかについては、区分所有法26条2項で共用部分に生じた損害賠償金等について管理者が区分所有者を代理する旨規定されていること等の関係で議論があり、これを否定する裁判例(東京地裁平成13年11月14日判決ウエストロー2001WLJPCA11140004)もあります。

(3)肯定説

 しかし、マンションの居室の売買契約は、専有部分に加えて、共用部分の共有持分をも対象とするものである以上(区分所有法15条1項で、共用部分の共有持分が、専有部分の処分に従う旨が規定され、また、同条2項では、共用部分の共有者は、その有する専有部分と分離して共用部分の持分を処分することができない旨が規定されています。)、買主は、自ら、売主に対して、共用部分の瑕疵についても瑕疵担保責任の追及ができると考えられます。

 共用部分の瑕疵も売買目的物の瑕疵に該当するとされた裁判例としては、東京地 裁平成25年3月11日判決(ウエストロー・ジャパン2013WLJPCA03118001)(ルーフバルコニーの瑕疵)や、東京地裁平成20年3月27日判決(ウエストロー2008WLJPCA03278014)(地中躯体壁の瑕疵)があります。


2 共用部分の瑕疵担保責任をめぐる各当事者間の権利義務関係について

(1)設例

 ここで、マンションの共用部分に、マンションの分譲当初から欠陥があった場合の、分譲事業者A、Aからの居室の購入者(転売者)B、Bからの転得者C、マンションの管理者(管理組合の理事長等)Dの、共用部分の共有持分についての瑕疵担保責任をめぐる権利義務関係は、以下のとおりになると思われます。

(2)売買取引の当事者ができること

 まず、購入者(転売者)Bは分譲事業者Aに瑕疵担保責任の追及ができます。

 また、転得者Cは購入者(転売者)Bに瑕疵担保責任の追及ができます。

 他方、転得者Cと分譲事業者Aには契約関係がないため、転得者Cは直接分譲事業者Aに瑕疵担保責任の追及をすることはできません。

(3)管理者(管理組合の理事長等)ができること

ア 区分所有法26条2項による転得者の代理

 管理者Dは、区分所有法26条2項に基づき、区分所有者たる転得者Cを代理して購入者(転売者)Bに対する瑕疵担保責任の追及を行います。ただし、既に転得者Cが購入者(転売者)Bに対して瑕疵担保責任の追及を行った場合はこの限りではありません。

イ 代理権付与による購入者(転売者)の代理

 購入者(転売者)Bは既に(区分所有法26条2項の)区分所有者ではないので、管理者Dは、購入者(転売者)Bの分譲事業者Aに対する瑕疵担保責任の追及について、購入者(転売者)Bを代理することは、当然にはできません。

 しかし、管理者Dは、区分所有者たる転得者Cを代理して購入者(転売者)Bに対する瑕疵担保責任の追及を行う過程で、購入者(転売者)Bから、分譲事業者Aに対する瑕疵担保責任に基づく請求権の行使についての代理権の付与を受けることがあり得ます。

 その場合、管理者Dは、購入者(転売者)Bを代理して分譲事業者Aに対して瑕疵担保責任の追及を行うことになり(ただし、既に購入者(転売者)Bが分譲事業者Aに対してこれを行った場合はこの限りではありません。)、管理者Dとしては、分譲事業者Aに対する共用部分の瑕疵担保責任の追及を一元的に行えることになると考えられます
(詳細は、稻本洋之助、鎌野邦樹著『コンメンタールマンション区分所有法第3版』161頁以下(日本評論社2015)をご参照ください。)。


以上



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