2017年12月

株主提案

仲田 信範



 株主総会には毎年1回開かれる定時株主総会と,臨時に開かれる臨時株主総会とがあります。
 株主は株主総会に先立って,総会で議決する事項について,取締役に議題(及び議案)を提案(株主提案)することができます。株主は株主総会に出席して,株主総会の議題に関連して反対意見を述べたり,修正議案を提出することはできますが,それはあくまで議題に関連する事項に限られます。株主提案は,会社が予定していない事項について,議案として決議の対象とすることができます。
 株主提案制度は,株主に株主総会への出席を促し,総会での議論に参加してもらうことを目的として昭和56年に創設されました。

 まず株主提案の事項についてですが,株主総会で株主が議決権を行使できる事項であればすべて対象とすることができます。通常株主総会では,普通決議の対象である取締役をはじめとする役員の選・解任,剰余金の配当,計算書類の承認,及び特別決議の対象で会社の併合,株式譲渡を制限する定款の変更等があり,これらについて株主提案できることは言うまでもありません。しかし,取締役会の専決事項である業務執行の決定(たとえば重要な財産の処分等)は,株主提案はできません。しかし会社法上は取締役会の専決事項とされている事項についても,株主総会で定款を変更して総会の議決する事項とすることはできますので,定款変更と併せて提案すれば,業務執行に関する事項についても株主提案ができます。
 株主総会の権限外である可決されても法的拘束力持たない勧告的事項については,株主提案は認められないと考える説が有力です。

 次に,株主提案の手続きについて,説明します。株主提案できる株主は,公開会社・非公開会社で取締役会設置会社は6か月以前より議決権の100分の1以上または300株以上有する株主です。株主は株式総会の開催の日の8週間前までに,会社の代表取締役(取締役でもいい)に株主提案する事項について株主総会の目的とすることを請求することができます。また同じく8週間前までに,取締役に対し,株主提案に係る事項についての議案の要領を全株主に通知することを請求することができます。「議案の要領」とは,裁判例によれば,株主提案者が提案する解決案の基本的内容について,会社及び一般株主が理解できる程度のものを言うとされており,議案の「提案の理由」は議案の要領には含まれないとされています。だから株主提案者が提案の理由を書いたとしてもその全文が株主総会の招集通知に記載されるとは限りません。
 この8週間前という定めですが,株主は通常は株主総会の招集通知を受領するまで具体的な開催日を知ることができないので,推測して計算することになります。定時株主総会は決算日から2カ月以内に開催されるので,それから逆算すると,決算日から8週間前には提出したほうがいいと思います。

 株主提案権が適法に行使されれば,議長は株主総会で議題または議案として取り上げ,総会に諮らなければなりません。提案した株主は,総会で,その理由を説明することができ,議長は提案者にその機会を与えなければなりません。
 会社が,総会の通知書に株主提案を記載しないで株主に通知しなかった場合または株主提案が適法に請求されたにも関わらず,会社がそれを無視して株主総会の議題としなかった場合,いずれの場合も会社は100万円以下の過料に処せられます。このような場合で,総会で株主提案の内容と牴触する議案が可決された場合には,その決議には取消事由があるので,提案株主は会社に対して取消の請求ができます。

 自己の議案の通知請求権を行使したにもかかわらず,株主提案またはそれと実質的に同一の議案について議決権総数の10分の1以上の賛成を得られないで否決された場合,総会の日から3年を経過していなければ,会社に対して他の株主への議案の要領を通知することを請求することはできません。実質的には議案の発議権がないと言えましょう。
 「実質的に同一」かどうかは具体的なケースに即して判断することですが,形式的には同一の議案であっても前回の提案とはその背景や条件が異なっている場合には実質的に同一とは言えません。たとえば剰余金の配当議案について,1株あたりの配当金額が同一であっても,事業年度が異なれば同一とはみなされません。

 近年,株主提案や委任状勧誘が増加しており,株主の意思を株主総会に反映させるための参加意欲が高まっています。多くの物言う株主の存在が会社を活性化させ,また取締役にコンプライアンスを徹底させることに資するものと思われます。

以上


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