2019年8月

弁護士会の国選弁護研修と被疑者国選弁護の対象事件の拡大


中川 武隆



1 国選弁護研修 
 昨年秋、ゴルフをご一緒した当事務所のN弁護士のお勧め、お誘いもあり、国選弁護を担当しようと考えた。すると、所属弁護士会から、新規登録弁護士研修としての国選弁護研修を受ける必要があると指示された。ちなみに、私の弁護士登録は、2009年である。

2 ゼミ形式による研修
 まず、新規登録弁護士が受講するゼミ形式による研修がある。私の場合、その年度に実施された研修の、DVD画像を視聴することでよいとのことであった。「捜査弁護」、「公判弁護」、「少年事件」と3本立てであり、各1時間半、合計4時間半視聴した。多数の新規登録弁護士のために、しかも、ゼミ形式で、このような研修を実施する弁護士会研修企画担当者、講師の方々の努力は大変なものであろうと実感した。
 内容は、国選弁護等を引き受けた場合に、順次、生じるであろう問題について、質問し、それをクラスの中で考えてもらうという方式であり、まずは、基本的事項を押さえてもらおうという趣旨に出たものと思われる。

3 個別研修
 このDVDの視聴は、1月に終えていたのだが、個別研修も必要であるとされ、そのため、今回、初めて、被疑者国選事件の担当日の割り当てを受けた。個別研修には、相談担当弁護士という制度がある。初回に接見した後、当該事件の争点、弁護方針に関して、相談担当弁護士と相談できるという制度である。これは、大変に良い制度であると思われる。何事も経験者と議論してみることが、良い発想、解決に至る。私の場合、そのお役目をN弁護士にお願いした。実際、有益な教示、示唆を多数頂戴することができた。

4 被疑者国選弁護の対象事件の拡大とその効果
 平成28年改正刑訴法により、対象が勾留状の発せられているすべての被疑者に拡充された(刑訴法37条の2第1項、平成30年6月1日施行)。従来は、法定刑による対象事件の制限があったが、それが撤廃された。そのため、弁護士会の新人弁護士研修のための素材が確保されやすいという副次的効果を生じている。
 今回、研修の一環として、被疑者国選事件を担当して、実感したのであるが、被疑者国選の対象事件の拡大は、ひいては、被告人国選の弁護活動の充実に繋がると思われた。なぜなら、被疑者国選の被疑者が起訴された場合、同じ弁護人が、当然、起訴後の被告人国選弁護人となる扱いとなっている。したがって、例えば、起訴と同時に保釈申請をすることが可能である。また、情状立証であれ、無罪を主張するための立証であれ、早期に準備に着手することが可能である。あるいは、被疑者段階の接見などを通じて、被疑者やその関係者と弁護人との間の信頼関係が醸成されていれば、公判における弁護活動もスムーズに運べることが多いであろう。プラス面が多いように思われる。
 被疑者国選の対象事件の拡大が、被告人国選事件の弁護活動の格段の充実に繋がり、ひいては、適正な刑事司法の実現に結び付いていくであろうことを大いに期待したい。

5 被疑者国選の活動を終えての気付き
(1) いわゆる接見渋滞について 地裁刑事14部から国選弁護人選任命令書を受領し、その足で、初回接見のため、18時過ぎにある警察署に赴いた。私は、幸い、1番始めに到着したから、それほど待つことなく、接見できたが、1時間以上接見して、受付に戻ってくると、お二人の弁護人が待っておられた。私が逆の立場であれば、さぞイライラしたことであろう。この警察署は面会室が2室あり、設備として最新鋭であるが、1室の警察署であれば、もっと大変だろう。ところで、私が入った面会室は、面会者が優に3人以上も入れるゆったりした広さであった。もっと小さい個室のような部屋を沢山設置してもらった方が効率的であると思われた。被疑者国選の初回接見が集中する事態に対応できる施設が望まれる。
(2) 家族への勾留通知(刑訴法207条1項、79条)について 電話によりなされることも多いが、被疑者が記憶していた番号が誤っていて別人が出るなどした場合、通知不能とせざるを得ないようである。家族と連絡が取れていないというので、初回接見した翌朝に、郵便局の特急郵便により、家族に宛てて、留置先などを連絡した。その結果、家族と被疑者との面会が実現した。

以上



↑TOP