弁護士コラムバックナンバー

人生100年?

三木 昌樹

 日本における高齢化が問題になっています。内閣府が作成した「平成30年版高齢社会白書」によりますと、「我が国の高齢化は世界に類を見ないスピードで進展」していることが、具体的な数字を示して明示されています。

 また、リンダ・グラットンさんが書いた「ライフ・シフト」という本が「人生100年時代」というブーム(?)を作り、売れているそうです。

 ところで、前回のコラムで「働き方改革」に触れましたが、その「働き方改革実行計画」の中でも「高齢者の就業促進」がテーマの一つとされています。もっともこのような政策としての高齢化対策は、その主眼が国や社会が高齢者をどのように扱うかといった観点から取り上げられていますが、リンダさんの著書では、人生100年を迎える個々人の心構えをテーマにしているようです。

 最近感じているのは、私の周りにいる高齢者(と言われる人たち)は一部の人を除いて元気いっぱいの人が多いということです。公的には65歳以上を高齢者と位置付けて色々なデータを作成しているようです。また75歳からは後期がつきます。私の身近にも前期、後期を含めていわゆる「高齢者」が増えてきています。彼らは人生100年時代のモデルになるのではないかと思いますが、人生100年とすると、75歳でも、まだまだあと25年も余生(?)があることになります。これは結構大変です!しかもただ長生きしてもちっとも楽しくないです。元気でしかも豊かな気持ち長生きすることが肝心です。

 幸か不幸か、私の職業には、定年がなく、その気になれば働けるうちは働くことが出来ます。学生時代やサラリーマン時代の友人たちは、私のように資格を持って自営業をしているか自分で事業をしている方以外は、ほぼ全て定職のない生活に入っています。私は、彼らとは定期的に会って会食をしたり、ゴルフをしたりしています。私の友人たちは、昔から仕事だけでなく遊びも好きなので、いくつかのグループがあり、それぞれのグループごとに楽しいお付き合いをさせてもらっています。また、彼らの中にも、単に年金をもらって趣味に生きているだけでなく、たとえば裁判所の調停委員や民生委員などの公的な仕事やボランティアをしている方、勤め上げた会社の顧問をされている方、自治会の役員やマンションの管理組合の役員など地域活動をされている方もいます。彼らは上述した通り、元気な方々が多いです。そしていまだに色々なことに対して意欲的です。当然のことながら、彼らが経験等から得た知識や技能、はたまた物事に対する判断力などは極めて優れたものがあります。

 政府も先ほどの白書において「一億総活躍社会」の実現に向けてとして「人生100年時代構想会議」なるものを開催して老人パワーを活用するための基本構想を打ち出すようです。

 国にも頑張ってもらいますが、我々も自分の人生を楽しむとともに地域や周りの方々に恩返しではありませんが、これまで育てていただいたことに感謝するなど各自考え努力することが大切だと思います。国が色々と環境を整えてくれることはありがたいですが、結局は各自が自分で考え自分の意思で動くことが大切だと思います。

 そういった長ーい人生の締めくくりかたについても触れてみたいと思います。私ごとになりますが、私の母は数年前にちょうど100歳で亡くなりました。100歳の誕生日を10日ほど過ぎて亡くなりました。母は2つのことを教えてくれました。1つ目は、母は点滴なども含め一切の延命措置を断り、最後の1週間余は水だけで生きながらえていました。医師からは水だけでは1週間位しか持たないと言われ、その通りになりました。最後まで自分の意思は割としっかりしていたようです。尊厳死を実行したのだと思います。2つ目は葬儀をして墓などに入れるな、遺骨は散骨にしてくれと言われ、本人の希望通り富士山の見えるところに散骨をしました。富士山が見えたら思い出してくれとのことでした。これも立派な選択だと思いました。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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