2017年11月

住宅紛争審査会(指定住宅紛争処理機関)による紛争処理の体制について

楠 慶



 住宅紛争の解決には、裁判所での訴訟手続や調停手続での解決等の他に、最近利用件数が増加しているものとして、以下のとおり、住宅紛争審査会(指定住宅紛争処理機関)での解決が考えられます。以下で、ご紹介いたします。

1 住宅紛争審査会(指定住宅紛争処理機関)と住宅紛争処理支援センター

(1) 住宅紛争審査会(指定住宅紛争処理機関)
 国土交通大臣は、弁護士会又は一般社団法人若しくは一般財団法人であって、紛争処理の業務を公正かつ適確に行うことができると認められるものを、紛争処理の業務を行うもの、として指定できます(品確法66条)。この指定を受けた機関が、指定住宅紛争処理機関です。
 現在、全国の52の弁護士会の住宅紛争審査会が、指定住宅紛争処理機関として指定されています。

(2) 住宅紛争処理支援センター
 紛争処理業務を行うのは住宅紛争審査会(指定紛争処理機関)ですが、国土交通大臣は、指定紛争処理機関の行う紛争処理業務の支援や住宅購入者等の利益の保護並びに住宅に係る紛争の適正な解決を図ることを目的とする一般財団法人について、全国に1つ、住宅紛争処理支援センターとして指定できるとされています(品確法82条)。
 これを受け、現在、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理センターが、住
宅紛争処理支援センターとして指定を受けています。公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理センターでは、住宅購入者等向けに、「住まいるダイヤル」(電話番号0570-016-100(ナビダイヤル)) と呼ばれる電話相談窓口を設けているほか、専門家との対面相談(実際に相談を実施しているのは全国52の弁護士会の住宅紛争審査会です。)も実施しており、これらの相談業務の中で、必要に応じて、住宅紛争審査会(指定住宅紛争処理機関)による紛争処理制度の利用が案内されています。

2 紛争処理の対象となる住宅、取り扱う紛争の内容と当事者

(1) 紛争処理の対象は、評価住宅と保険付住宅に限定。
 住宅紛争処理機関(住宅紛争審査会)による紛争処理の対象となる住宅は、住宅性能評価書(新築住宅の他、既存住宅についても交付される。)が交付された、いわゆる評価住宅(新築住宅・既存住宅)と、住宅建設(販売)瑕疵担保責任保険に加入した、いわゆる保険付住宅になります。

(2) 取り扱う紛争の内容は幅広い。
 住宅紛争審査会(住宅紛争処理機関)で扱う紛争の内容は、評価住宅について性能評価の項目を巡る紛争に限定されるものではなく、また保険付住宅についても(保険金の支払い対象となる)特定住宅瑕疵担保責任に係る瑕疵(建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に関する瑕疵)に限定されません。
 例えば、広く瑕疵一般に関する紛争は勿論、工事代金や売買代金の支払遅延に関する紛争も、対象となります。

(3) 請負人や売主も利用できる。
 住宅紛争審査会(住宅紛争処理機関)による紛争処理手続は、住宅の発注者や買主が、その請負人や売主を相手方として申請出来るのは勿論ですが、請負人や売主(事業者も含みます。)が、発注者や買主を相手方として申請することも出来ます。

3 紛争処理の手続の種類(あっせん、調停、仲裁)

 住宅紛争処理機関による紛争処理の手続は、裁判によらない紛争解決手続(ADR)であり、あっせん(調停の手続を簡略化したもの。)、調停(3名の調停委員が当事者双方の意見を聞き、調停案を作成するなどして解決を図る。)、仲裁(当事者双方の主張を聞き、証拠調べ等をした上で仲裁委員が仲裁判断を行う。)、の3種類があります。
 なお、仲裁申立てには消滅時効を中断する効力があります(仲裁法29条2項)が、あっせんの申立てと調停の申立てには、消滅時効を中断する効力がありませんので、注意が必要です。

4 手続の特徴

 住宅紛争処理機関による紛争処理の手続の特徴は、以下のとおりです。
①専門性
紛争処理を担当する紛争処理委員は、弁護士と一級建築士等の建築の専門家で、住宅紛争に関する専門家による公平な判断を得られます。
②非公開
手続は非公開とされるため、プライバシーや営業上の秘密の保持を図ることが出来ます。
③迅速性
基本的には、当事者の合意による解決を目指すため、迅速な解決を図る事が出来ます。
④経済性
 上記3のいずれの手続でも、申請手数料は1万円(非課税)と安価です。

5 住宅紛争処理の実施状況

 公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが発表している(紛争処理の実施状況と傾向など)ところによれば、近時、評価住宅についての申請件数は、概ね30件前後で推移しているのに対して、保険付住宅の申請件数については、平成23年度74件、平成24年度99件、平成25年度99件、平成26年度137件、平成27年度127件、平成28年157件、と増加の傾向が顕著です。


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