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暴力団排除条例(再び)

石田 英治

 平成23年10月1日に、東京都の暴力団排除条例が施行されました。近時の暴力団排除の動きはめざましいものがあります。有名漫才師が暴力団との付き合いを理由に芸能界を引退したニュースは、まだ記憶に新しいと思いますが、10年前であれば、社会も容認し、そこまでの騒動にはならなかったかもしれません。他にも芸能人と暴力団の繋がりについて、報道は続きました。

暴力団排除条例の特徴は、一般の民間人に対しても規制がかけられているという点です。本来それは警察がすべきことなのではないかとの声もありますが、警察にだけ頼っていても十分な効果は上げられず、官民が一体となった排除活動が必要とされているのです。

東京都の暴力団排除条例では、民間の事業者に対して、その事業に関して、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなるという事情を知って、暴力団関係者に対して利益供与をしてはならないと規制しています。これに違反すると、勧告という措置が取られることがあります。報道によれば、暴力団による飲食店への観葉植物リース業を代行したとして、東京都公安委員会は、12月12日、暴力団排除条例に基づき、埼玉県の造園業者に利益供与の中止を勧告したそうです。これが東京都における初の勧告とされています。東京都以外でも、勧告措置を受けた企業は数多くあります。

近時、企業におけるレピュテーションのリスクは極めて大きく、条例に基づき勧告を受け、報道されることになれば、暴力団関係の不祥事が公になるわけですから、経営上極めて大きな打撃になることは間違いありません。場合によっては、担当者やトップ個人の責任も問われることになるでしょう。もちろん、企業には社会的責任があるわけですから、レピュテーションリスクのみを考えた消極的な対応は望ましい姿ではありませんが、動機はどうであっても、現在、暴力団排除条例に敏感になっている企業は少なくありません。最近の報道では、日本民間放送連盟も、番組出演者やその所属企業などが暴力団と関係していたり、出演が暴力団の活動を助長することが判明したりした場合、出演契約を催告なく解除できるとする「出演契約における反社会的勢力排除についての指針」を策定したそうです。

暴力団排除条例に的確に対応するには、企業がしっかりとした危機管理態勢を整えると共に、各種契約書に暴力団排除条項を入れることが肝要です。当事務所には、弁護士会の民事介入暴力対策専門の委員会に所属する弁護士が複数名おり、条例対応の相談に応じています。

以上     

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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