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暴力団排除条例

石田 英治

 警察の統計によれば、平成21年12月末現在で、暴力団構成員の数は、38,600人、準構成員の数は、42,300人であり、合計80,900人になるそうです。暴力団対策法が施行された平成4年当時の合計数90,600人と比べると、統計上は9,700人ほど減少していますが、大きなスポーツ施設でも収容しきれない程の数は脅威であり、依然として強固な勢力を維持しています。警察は暴力団の壊滅に向けて力を注いでおり、最近では、指定暴力団山口組のナンバー2とナンバー3が相次いで逮捕されました。現在、ナンバー1は収監中ですので、組織には大きな打撃になったと思いますが、簡単に弱体化するとは思えません。

暴力団追放は、警察に委ねるだけでは十分ではなく、社会全体で行う必要があります。社会が暴力団を容認していれば、暴力団がなくなることはありません。この点に関連して、近時、都道府県レベルで、暴力団排除条例というものが制定されるようになりました。その内容は、各自治体で多少違いがありますが、市民や企業の義務に関して言えば、暴力団との取引や利益供与が禁じられることとなり、違反すると罰則が課せられることになりました。日本で初めて暴力団排除条例が制定された福岡県では、事業活動をするにあたり次の行為が禁止されています。

   1. 暴力団の威力を利用する目的で暴力団員と商取引をすること

   2. 暴力団に協力する目的で暴力団員に利益の供与をすること

   3. 暴力団の活動に資するものであることを知りながら暴力団員と取引をすること

   4. 暴力団員等に対し、不当に優先的な取り扱いをすること

1.2.4.が不当であることは言うまでもありませんが、善良な市民・企業にとっても3.は負担になるかもしれません。具体的には、例えば、不動産業者が暴力団の組事務所として使用されることを知りながら不動産を賃貸することはできません。また、ホテルが暴力団の会合に利用されることを知りながら会場を提供することもできません。仕出し業者が暴力団の宴会用に料理の注文を受けたり、印刷業者が暴力団の名刺や挨拶状の印刷の注文を受けることもできなくなります。微妙なところでは、暴力団員に高級車を売ることがどうなのかという点も問題になります。

上記は福岡県の条例ですが、他の道府県でも概ね同様の規制がなされています。また、東京都は未だ制定されていませんが、近々制定される予定と聞いています。

これまでは、弁護士と民暴(民事介入暴力)の関わりは被害救済が主なものでしたが、平成19年に犯罪対策閣僚会議幹事会申合せとして「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」が公表され、反社会的勢力を社会から排除することは企業の社会的責任でもあるとされ、具体的な被害に関わらず、企業は反社会的勢力との関係を一切遮断することが義務付けられました。これ以降、社会が積極的に暴力団を追放していくべきであるという流れが強まってきたように思います。

日本では、映画やテレビの影響からか暴力団にも任侠の一面があると思っていたり、地元の友人知人が暴力団員であったりすることも少なくなく、暴力団に一定の評価をする人もいるようです。そのような人は彼等の裏の顔をよく知らないものと思います。実際に弁護士の立場で数多くの被害救済に携わってみると、彼等は金やメンツのためであれば人の人生を台無しにすることも厭いません。詐欺や不当要求によって全財産を奪われてしまったり、暴力被害により一生治らない後遺症を負ったりする等、実際に悲惨な例を何度も目にしてきました。

上記の条例は市民や企業にとって大変な負担となりますが、暴力団のいない明るい社会を実現するためには避けて通れません。当事務所でも、複数の弁護士が弁護士会の民暴委員会に所属して、暴力団追放活動に携わっています。

以上     

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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